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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 高所得者の国民年金は減額すべきか 2024.12.20
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10月16日に関西経済連合会が「社会保障を中心とする税財政に関する提言」を取りまとめました。そのなかで、「年金以外の所得が一定以上の比較的ゆとりがある高齢者については、老齢基礎年金の支給額の低減あるいは支給停止を制度化すべき」と提案したことが、注目を集めています。要するに、ある程度稼いでいる高齢者に対しては、国民年金の給付を減額しようということです。現役世代の保険料負担を減らすことが目的です。
私はこの提案に反対です。まず国民年金給付は、満額でも月額6万8000円で、そもそも十分な額とは言えません。また、40年間も延々と保険料を納めてきたのに、稼いだからと言って、年金を払わないのは、筋が通りません。もし、民間の生命保険会社が同じことをしたら、暴動が起きてしまうでしょう。
さらに、高齢者が働き続ける最大の理由は、年金だけでは生活費が足りないからです。もし、働いて稼ぐと年金が減らされる制度が導入されると、稼ぐと年金減、さらに稼ぐとさらに年金減という悪循環に陥ってしまいます。
関経連は、具体的にいくら稼いだら年金を減額するのか、具体的なラインを提示していません。ただ、実は同様の制度は、厚生年金ではすでに導入されていて、年金月額と月額報酬の合計が50万円を超えると減額が始まります。年金月額を10万円とすると、月に40万円以上稼ぐと年金減額が始まるのです。
後期高齢者医療保険の窓口負担は、課税所得が年額28万円以上の人が家族のなかにいると、1割負担が2割負担に上がります。
介護サービスを受けたときの自己負担は、単身者の場合、合計所得金額が220万円以上で、3割に上がります。
こうした事例からみると、国民年金が減額される年収基準は、相当低く設定されそうです。これだけ理不尽な高齢者イジメは許されるべきではないと私は思いますが、いまのところ強い批判は出ていません。