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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 少子化の本当の原因 2024.12.20
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児童手当の拡充や保育所待機児童の解消など、政府は積極的な子育て支援を進めています。それにも関わらず、少子化は進む一方です。一体何故でしょうか。私は、老後生活が厳しくなっていることが大きな原因だと考えています。
年金生活に入っても、所得税、住民税、健康保険料、介護保険料は、ずっと徴収されるので、年金をまるまる手にすることはできません。そこに、医療費の窓口負担と介護サービスの自己負担が加わります。極めて特殊なケースではありますが、私はいま原発不明がんを患っているので、この自己負担だけで毎月30万円以上支払っています。
高齢者の生活がこれだけ厳しくなっているにもかかわらず、政府は9月13日に閣議決定した「高齢社会対策大綱」で、75歳以上の後期高齢者のうち、医療費の3割負担を求める対象者を拡大する方針を明記しました。
そうなると、老後はずっと働き続けないと、生きていけません。実際、有識者のなかには、高齢者の定義を65歳から75歳に引き上げようという声が強まっています。
もちろん生きがいや健康のために働き続けることはよいことですが、お金のためにやりたくもない仕事を続けざるを得ない老後というのは、けっして幸福とは言えないでしょう。
そうした暗い老後の現状をみて、子供を作るかどうか悩んでいる若いカップルはどう思うでしょうか。私だったら、自分の子供にそんな辛い老後を経験させたいと考えることは、ないと思います。
逆説的になりますが、本当に少子化を防ぐ効果的な対策は、高齢者に明るい未来を用意することなのではないでしょうか。もはや、死語となりつつある定年後の「悠々自適」という選択肢を残していくことが、私は必要だと考えています。ただ、残念ながら、そうしたビジョンを語る政治家は、ほとんどいないというのが、現状なのです。