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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 基礎年金の目減り対策で積立金投入 2024.11.02
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厚生労働省が、国民年金(基礎年金)の目減り対策として、厚生年金の積立金を投入する案を本格的に検討することが明らかになりました。今年7月に発表された公的年金の財政検証では、将来の国民年金(基礎年金)の目減りが深刻で、「過去30年投影ケース」という従来トレンドを延長するケースでは、現役世代の手取り収入に対する年金受給額の割合を示す「所得代替率」が2024年度の36・2%から2057年度には25・5%へと、約3割も減少します。そこで、厚生労働省は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する厚生年金の積立金を投入することを検討することにしたのです。
国民年金(基礎年金)の目減り対策を年金積立金で行うことには批判もあります。年金積立金は、元々厚生年金の保険料を財源にしているからです。ただ、厚生年金受給者も、基礎年金を受け取るので、その目減り対策は、厚生年金加入者にも大きなメリットがあります。本来なら、国民年金(基礎年金)の目減り対策は、税金の投入を増やすことが筋だと思いますが、財務省が絶対に認めません。つまり他に目減りを防ぐ方法がないのです。
また、年金積立金の運用では、近年の円安・株高の影響で、今年6月末までで、163兆円もの利益を出しています。それを活用しない手はありません。日本の公的年金制度は、基本的に賦課方式と呼ばれる方式になっていて、その年の高齢者が受けとる年金は、その年の現役世代が支払った保険料と税金で賄われています。ですから、年金積立金は万が一のための調整弁なのです。ただ、およそ半分を株式や外貨という値動きのある資産で運用している年金積立金は、バブルが崩壊すると吹き飛んでしまいます。そのため、年金の目減り対策として使うことを決断したのなら、莫大な利益を抱えているいまこそ、積立金を現金化して、将来に備えることが必要だと、私は考えています。