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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 年金はフルにはもらえない 2024.07.10
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老後の生活設計をするときに自分がいくら年金をもらえるのかを気にしている人はたくさんいますが、意外な落とし穴となっているのが、年金は額面通りには、もらえないということです。年金から差し引かれる主なものは、①所得税、②住民税、③医療保険料、④介護保険料の4つです。所得税や住民税は、所得に応じて課税されるもので、所得が低い場合には非課税になりますが、問題なのは所得が低くても負担が降りかかってくる社会保険料です。しかもそれが、どんどん大きくなっているのです。
厚生労働省は、4月1日に、75歳以上の後期高齢者2千万人が加入する後期高齢者医療制度に関し、保険料の見込み額を公表しました。1人当たりの全国平均月額は、今年度は7082円で、昨年度と比べて507円(7.7%)も増えました。来年度はさらに110円(1.6%)増えて7192円となります。
介護保険料は、自治体によって保険料が大きく違っているのですが、東京都世田谷区の場合、現在の基準額で6280円となっています。つまり社会保険料だけで毎月1万3000円以上の負担となっているのです。
かつて後期高齢者の医療費は無料で、介護保険料の負担もありませんでした。それがなぜ急激な負担増が強いられているのかというと、現役世代の保険料負担を抑えるために後期高齢者にも負担を求めることになったことと、もう一つは、出産・育児支援金の一部を後期高齢者も負担することになったからです。さらに岸田政権が進める児童手当の高校生への適用拡大等の「異次元の少子化対策」によって、さらに負担が増す見込みです。
私は子育て支援自体に反対するわけではありませんが、そもそも医療保険というのは、病気やケガをした人を助け合う仕組みです。そのなかに異質の子育て支援負担を入れるのは筋が通りませんし、ただでさえ所得の低い高齢者を巻き込むのは、正しいのでしょうか。