アクティブなシニアライフを応援する情報サイト
森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 束の間の年金実質増 2024.03.20
-
厚生労働省が2024年4月からの公的年金の支給額を前年度比で2・7%引き上げると発表しました。現在の年金改定のルールでは、物価上昇率と賃金上昇率のいずれか低い方に合わせて年金改定が行われます。今回の改定では、賃金上昇率の方が低かったので、それに合わせた改定ということになります。
現在の年金改定ルールでは、理論的に、物価上昇率の方が高ければ年金の実質給付はマイナス改定となり、賃金上昇率の方が高ければ、年金の実質給付はゼロ改定になります。つまり、理論的には、実質年金がプラスになることは、未来永劫ないことになります。
ところが、4月以降、年金が物価上昇を差し引いてプラスになる、つまり実質年金がプラスになる可能性が出てきました。それは、物価上昇率が急速に下がってきているからです。生鮮食品を除く消費者物価指数は、昨年1月には前年比4・2%という高い上昇率でした。ところが、物価はどんどん落ち着いてきて、12月には2・3%になっています。さらに、これから消費者物価上昇率がもっと下がる可能性もあります。例えば、企業物価指数(旧卸売物価指数)は、昨年1月に前年比9・5%の上昇率でしたが、12月には0・0%となっています。さらに、不動産バブル崩壊で、中国がデフレ気味になっており、安い中国製品がこれから日本に入ってきます。もちろん、ウクライナや中東での戦争が激化するなど、不安定要因は目白押しですが、私は消費者物価上昇率が2%を割り込んでいく可能性は、十分あるのではないかと考えています。
そうしたなかで、物価が落ち着いていけば、公的年金の改定率が2・7%になったということは、実質年金がプラスになることを意味します。もちろん、それは来年度1年間に限ったことですが、公的年金の実質給付が減り続けるなかで、少しだけ年金生活者の懐が潤う可能性が出てきたことは、喜ばしいことだと思います。