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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活

食料安全保障を考える 2023.06.30
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 【森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活】一覧はこちら

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに食料安全保障への関心が高まっています。そのなかで、政府は、農業政策の基本指針となる法案を国会に提出することを目指しています。具体的には、有事の際の食料不足に備えて、花農家にコメやイモを作るよう命令したり、限られた食料がまんべんなく消費者に行きわたるように価格統制や配給制を導入することも視野に入れているとされます。ただ、私はいざという時に、農家にコメやイモを増産させれば、国民の命を守れるという考え方は、無理があると思います。例えば、花農家がコメを作れるようにするには、区画を整備し、粘土質の土に入れ替え、農業用水を確保する必要があるので、コメが収穫できるまで、数年の時間が必要になります。イモを作るにしても、肥料を入れて、芽欠きをして、土寄せをしてと、収穫のためにはそれなりの技術が必要ですし、種イモの確保も問題になります。
普段から避難訓練をしておかないと、いざという時に避難ができないのと一緒で、普段から農作物を作る技術を身につけておくことが重要だと私は考えています。最近、東京世田谷区に住む知人から、畑を借りて農業を始めたと聞きました。1坪にも満たない畑で、月額1万3千円もレンタル料が必要だということです。そんなに高価でも、借りるには数か月待ちだったそうです。もちろん農業としての採算はまったく取れません。それでも知人が始めた理由は、「楽しいから」だそうです。
私自身は、農業を始めて6年目になりました。ただ、いまでも収穫まできちんとたどり着く成功率は6割ほどです。それでも、一度も経験のない人に比べれば、数倍の収穫が得られる自信はあります。いま日本の農業就業人口は130万人しかいません。それで国民全員が食べる農産物を作るのは不可能です。農業は楽しいという最大の特長を生かして、多くの人が農業生産の技術を持つことが、安全保障につながるのではないでしょうか。


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