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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 最強の住民税非課税世帯 2023.05.12
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政府は物価高対策として、住民税非課税世帯に一律3万円の給付を行うことを決めました。また、住民税非課税世帯が子育てをしている場合は、子供一人当たり5万円が加算されます。物価高で生活が厳しい家計を救うことはもちろん大切ですが、私には、「また住民税非課税世帯だけか」という思いがあります。
安倍政権下で、新型コロナ感染症拡大に伴う生活不安を解消するため、一人10万円の特別定額金が給付されましたが、このときは、全国民一律でした。ところが今回の給付金は、住民税非課税世帯だけです。住民税非課税世帯というのは、世帯員全員の住民税が課税されていない世帯です。自治体によって異なりますが、給与収入だけの単身世帯の場合、年収100万円以下というのが住民税非課税の目安です。住民税非課税世帯の割合は、国民生活基礎調査によると、22%に過ぎません。つまり、今回の物価高対策の給付金は、8割の世帯はもらえないことになります。
住民税非課税世帯に関しては、昨年11月ごろ物価高対策として5万円がすでに給付されています。なぜ、政府は国民全体ではなく、住民税非課税世帯に支給を限定するのでしょうか。その理由は、財政負担を減らすためだとみられます。そのため、今後も同じことが続くでしょう。そこで発想を変えて、あえて住民税非課税世帯になるというのも、一つの戦略になります。現役世代のときは難しくても、高齢層になればそれは可能です。公的年金控除があるからです。例えば、単身の場合、年金収入が168万円程度までなら住民税非課税になります。さらに給与所得控除と調整控除があるので、月給5万円以下なら、給与収入を加えても、住民税非課税になります。住民税非課税世帯は、医療保険料や高額療養費制度の負担、医療費の窓口負担などが減るというメリットもあります。生活費を抑えて、その分給与収入を減らせば、多くの高齢者に非課税のチャンスが生まれるのです。