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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- マクロ経済スライドが示す年金の未来 2023.03.24
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いま厚生労働省内で、マクロ経済スライドの適用期間を、厚生年金と国民年金間で統一する検討が進められています。マクロ経済スライドは、2004年度に導入された仕組みで、保険料を支払う現役世代の減少率と平均余命の伸長率の合計を、年金改善率から差し引きましょうという仕組みです。例えば、賃金や物価が6%上がる一方で、現役世代の数が2%減り、平均余命が1%伸びた場合は、6%から2%と1%を引いて、3%の年金改善にとどめましょうということです。簡単に言うと、少子高齢化の影響で年金財政が悪化するのを防ぐために、年金給付を減らすことで調整する仕組みなのです。
このマクロ経済スライドは、国民年金の場合は2046年まで、厚生年金の場合は2025年まで続けられることになっていました。
なぜマクロ経済スライドの適用期間が、厚生年金はあと2年なのに、国民年金はあと23年も続くのかというと、原因は保険料を支払う現役世代の数にあります。国民年金を支払う農家や自営業者の数が減少してきているのに対して、厚生年金の保険料を支払う勤労者の数は、確実に増えてきています。女性や高齢者がより多く働くようになったからです。ただ、このままでは、マクロ経済スライドの適用が長く続く国民年金の給付が大きく減ってしまうため、厚生年金から国民年金に救済資金を回そうというわけです。いまのところ厚生年金も、国民年金も、マクロ経済スライドの適用は2033年までになりそうです。1年間のマクロ経済スライドは、マイナス0・9%と見込まれるため、今後10年間で年金給付が9%減少するのが、ほぼ確実ということです。現在国民年金は満額で6万4816円ですが、これが5万8983円に、厚生年金の夫婦2人のモデル支給額は21万9593円ですが、これが19万9830円に下がります。少なくともこれくらいの年金減少は、覚悟しておく必要がありそうです。