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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 今年は物価上昇率が低下する 2023.01.20
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いま多くの国民の頭を悩ませているのが物価上昇です。特に、電気やガソリンなどのエネルギーや食料品といった生活必需品の値上げが相次いでいることが、家計に厳しい試練を与えています。そのため、マスメディアは連日値上げのニュースばかりを伝えています。ただ、私は半年ほど前から、1年以内に物価上昇率はピークアウトして、落ち着いていくだろうという見立てをしていました。物価上昇率が毎月高まっていくなかで、それはなかなか信じてもらえなかったのですが、思わぬ援軍が現れました。
OECD(経済協力開発機構)が昨年11月に発表した経済見通しで、2023年平均の日本の消費者物価上昇率を2%と予測したのです。昨年10月の消費者物価指数の上昇率は3・7%です。12月には4%前後にまで高まる見通しです。そこから物価上昇率が低下を始めたとしても、今年の年末には物価上昇率が0%程度にまで低下しないと、年平均の物価上昇率は2%にはなりません。
なぜそんなことが起きるのでしょうか。一つの理由は、世界が不況に陥るからです。OECDの経済見通しで、今年の成長率は、アメリカもユーロ圏も0・5%となっています。インフレ抑制のために金利を大きく引き上げているからです。
もう一つの理由は、すでに国際商品の取引市場では、資源価格がピークアウトしているからです。例えばニューヨーク原油は、ロシアのウクライナ侵攻前は80ドルほどでしたが、侵攻後120ドルまで上昇しました。それが、昨年12月には70ドル台まで下がっています。こうした状況は、他の資源価格でも、ほぼ同様です。そして昨年10月に1ドル=150円まで進んだ円安も、12月には130円台に戻っています。ただ輸入価格が国内物価に波及するまでには半年ほどのタイムラグがあるため、物価上昇率が低下するのは、今年に入ってからになるのです。