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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 65歳までフルタイム労働 2022.12.14
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社会保障審議会が、国民年金の保険料納付期間を、これまでの40年間から5年延長して45年間とする案の議論を始めました。3年後に改正法案の提出を目指すそうです。
厚生労働省の調査によると、定年制のある企業のうち72%と、大部分が定年年齢を60歳としています。そのため、定年を機に、悠々自適の老後生活を送る人が一定数いました。ところが、その選択をすることが、今後は難しくなるとみられます。65歳を迎えるまでの5年間で支払う保険料は約100万円で、夫婦2人だと200万円になります。それを賄うだけの老後資金を上積みしておかないと、定年後からの悠々自適が不可能になるのです。
ただし、65歳に達するまで国民年金保険料を払い続けなければならないのは、無職の人、自営業やフリーランスの人、パートタイマーで働く人に限られています。厚生年金に加入するフルタイム労働者は、国民年金を支払う必要がありません。厚生年金保険料のなかに国民年金相当分が含まれているからです。
今後、国民年金の給付額は、少子高齢化の影響で大幅に下がることが見込まれています。私の試算だと、30年後には、最悪の場合、月額3万9000円になってしまいます。政府は、国民年金の給付を月額5万円台で維持しようと考えていて、今回の納付期間延長は、そのための重要な手段となるのです。
ただ、60歳以降の国民年金保険料負担を避けるため、フルタイムの就労先を探すのは容易なことでありません。そして何より、60歳で引退するというライフプランを事実上困難にする制度改正が、本当に正しいものなのか、私には大きな疑問です。現在、60歳台前半男性の就業率は、83%です。逆に言えば、17%の人が働かないという選択をしていることになります。私の同級生にも働かない選択をした人がいて、実に豊かな老後を過ごしています。働きたい人だけが働くという老後にできないものでしょうか。