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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第54回】実家の処分をどうするのか 2016.10.15
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私の周囲で、親が亡くなった後の実家をどうするのか悩んでいる人が増えています。自分自身の思い出が詰まっていて、兄弟が集まる拠点にもなっている実家を処分することは、心理的に大きな抵抗があるのは、事実です。しかし、誰も住まないまま、放置しておくと家はどんどん傷んでいきます。しかも、昨年施行された空き家対策特別措置法によって、保安上や衛生上、著しい危険がある場合には、自治体から勧告が出され、最終的には強制撤去が行われます。撤去費用は所有者の負担となります。また、空き家の撤去がなかなか進まないのは、家が建っていると、土地の固定資産税が6分の1に減額されることも大きな理由になっているのですが、自治体から勧告が出されると、その優遇もなくなるので、固定資産税が大幅に増えてしまいます。
ですから、空き家を放置することは、結果的に大きな負担を招くことになります。さらに問題は、地方部を中心に今後、大幅な地価下落が見込まれるということです。
昨年、野村総合研究所が発表した予測によると、今後新設住宅着工戸数が減少したとしても、世帯数の減少の効果が上回るため、既存住宅の除却や、住宅用途以外への転換が進まなければ、2033年の空き家は2150万戸、空き家率は30・2%に上昇すると見込まれます。3割も空き家になってしまったら、住宅価格の暴落は避けられません。しかもこれは、わずか17年後の話なのです。
そうなると、やるべきことは一つです。使わない家は、売れるうちに、売ってしまうということです。思い出にひたっている暇はないのです。
最近は、遺品整理業者が、きちんと遺品を仕分けして、思い出として保管しておくべきものを仕分けして、処分するかどうかの確認を取ってくれます。ですから、忙しいことを理由に放置するのではなく、ある程度落ち着いたら、思い切ることが重要でしょう。
■ PROFILE
森永卓郎 1957年東京生まれ。経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。コレクションを展示する博物館(B宝館)を新所沢に2014年10月に開館!