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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第37回】物価動向、つかの間の晴れ間がやってくる 2015.05.01
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コーヒーや乳製品など、食品の値上げが相次いでいますが、実は全体でみると、いま物価が急速に落ち着いてきています。4月以降は、消費者物価指数の対前年上昇率がゼロ、あるいはマイナスになるかもしれません。
理由は二つあって、一つは消費税引き上げの影響が一巡して、前年比でみると物価を押し上げる影響がなくなることです。もう一つは、原油価格の大幅な下落が、物価を押し下げていることです。物価が落ち着く一方で、所得はプラスになります。今年の春闘では、昨年よりも大きな賃上げ回答が続出しています。格差は大きいのですが、平均としてみると賃金は上がるのです。そして、公的年金も、前年比で0・9%増と、昨年0・7%カットされた分を取り返す形になります。昨年は3%程度の実質所得減になっていたのが、今年度は、現役世代も年金世代も、実質所得がプラスになるのです。
ただ、こうした状況になるのは、今年度だけだと私は考えています。原油価格がすでに底を打っているうえに、日銀の金融緩和が継続しているので、来年度から物価は、再び上がっていくでしょう。また、今年度の物価が来年度の年金額に反映されますから、今年度の物価が上がらないということは、来年度の年金は増えないということになります。
ですから、これからの一年間はいい気になって財布のひもを緩めないことが肝心です。そして、もう一つ必要なことは、来年度からの物価上昇に備えて、資産をどのように防衛するかを考えておくことです。むずかしいのは、日本の株価がかなり上昇していて、すでに適正水準に近づいていることです。適正水準を超えて上がり続ける可能性もありますが、いつ下落に転じるかわからないので、これからは、いつでも売れる体勢を取っておくことが必要です。いまは、絶対確実という投資対象がないので、当面は、外貨を含めて、幅広く分散投資をしておくのがよいでしょう。
■ PROFILE
森永卓郎 1957年東京生まれ。経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。コレクションを展示する博物館(B宝館)を新所沢に2014年10月に開館!