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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第35回】マクロ経済スライド実施で、どうなる年金 2015.03.14
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厚生労働省が1月21日の社会保障審議会に、公的年金制度改革の報告書を示しました。そのなかで、「マクロ経済スライド」をデフレ下でも適用するよう求めました。マクロ経済スライドというのは、2004年の年金制度改革で導入された仕組みで、年金受給者の平均寿命が伸びて給付が増える分と年金の支え手が減少して保険料収入が減る分は、年金給付の水準を引き下げることで、調整しましょうという仕組みです。導入当初は、毎年0・9%ずつ年金給付を削減する必要がでてくると言われましたが、制度導入以降10年、これまでに、このマクロ経済スライドが発動されたことは一度もありません。マクロ経済スライドには、デフレのときには発動されないという条件がついていて、これまでずっとデフレが続いてきたからです。
ただ、昨年の消費者物価がプラスになったことは確実なので、今年初めてマクロ経済スライドが発動されることになったのですが、今後はデフレであっても毎年マクロ経済スライドが実施されることになります。問題は、年金給付がどれだけ減るのかということです。マクロ経済スライドは、導入当初は年金給付を毎年0・9%ずつ削減させると言われたのですが、厚生労働省の推計によると、今年はそれが1・2%に拡大しています。今後25年間の平均を取ると、毎年1・3%ずつ年金が減っていきます。
社会保障審議会は、国民年金については、デフレ時のマクロ経済スライド発動を控えるように提言しています。ただ、今後日本経済がデフレに陥る可能性は、さほど高くないと思いますので、最大で年間マイナス1・3%の実質年金削減という風に考えておけばよいでしょう。20年間で26%も年金が減るのですから、深刻な問題であることは事実です。ただ、年金削減は少しずつしか進みませんから、生活の無駄を省きながら、節約を強化していくしか、対処の方法はなさそうです。
■ PROFILE
森永卓郎 1957年東京生まれ。経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。コレクションを展示する博物館(B宝館)を新所沢に10月に開館!