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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第30回】宙に浮いてしまう終身保険 2014.09.30
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明治安田生命が90歳以上の保険契約者1万1000人を調べたところ、2000人がすでに死亡していたことが分かりました。大半が終身保険の契約者だったそうです。終身保険は、保険料の支払いが終わったあとも生涯保障が続きますが、保険料の支払いが終了した後は、保険会社が保険契約者の死亡を直接知る機会がなくなります。そのため、保険金の受取人となっている家族が支払いの申請をしなければならないのですが、家族も生命保険に加入していた事実を知らないと、死亡保険金が迷子になってしまうのです。
終身保険の保険金は、300万円程度が一般的なので、明治安田生命一社で、宙に浮いている死亡保険金の総額は60億円程度とみられています。生命保険業界全体だと200億円を超えるでしょう。
生命保険は、大切な貯蓄です。それをきちんと相続するためには、家族に保険契約の内容を伝えておくことが重要なのです。ただ、実は生命保険以上に宙に浮いているのが預金です。銀行は、10年以上取引が行われていない口座を休眠口座に移しますが、その金額は、毎年850億円程度と言われています。休眠口座は、持ち主、あるいは遺族からの請求があれば、払い戻すことが可能ですが、現実に払い戻されるのは850億円のうち350億円だけで、残りの500億円は、銀行の収入になってしまっています。
生命保険にしろ、銀行預金にしろ、せっかく苦労して貯めたお金が、宙に浮いて消えてしまうというのは、何とももったいない話です。
遺言状を作るのは大変でも、少なくとも、どこにどれだけ資産があるのかをきちんとデータとして残しておくことは、自分自身の資産管理のためにも必要ですし、万が一のときに、残された家族が混乱したり、損をしないようにするためにも、まずやっておくべきことだと言えるでしょう。