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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第25回】待機高齢者も大きな問題 2014.05.02
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厚生労働省は、昨年10月の特別養護老人ホームの入居待機者数が52万4000人に達したと発表しました。前回(2009年12月)の調査では、42万1000人でしたから、4年あまりで10万人以上増えたことになります。政治家は保育所待機児童の解消を声高に叫んでいますが、私は保育所と同じくらい特養の不足は深刻だと考えています。
もしかすると、一般の高齢者ホームがあるから、特養の不足はさほど深刻ではないと考える人もいるかもしれません。しかし、そうではないのです。
特養と一般の高齢者ホームの違いは、特養の場合は、入居金が要らないということです。もちろん一般の高齢者ホームでも、入居金を取らないところもありますが、大都市立地のホームを中心に入居金を数百万円から数千万円に設定している施設がたくさんあります。
もう一つの違いは、特養の利用料金は一般の高齢者ホームよりもずっと安いことです。一般の高齢者ホームが月額20万円以上する場合が多いのに対して、特養は大部屋で7万円前後、個室でも12万円前後です。一般の高齢者ホームが暴利を得ているわけではありません。ただ、厚生年金のモデル年金が23万円しかないのですから、現実問題として、特養の料金くらいしか負担ができないのが家計の実態です。
私の父が施設のお世話になるときも、特養は考えたのですが、「2年半待ち」と言われて、早々にあきらめました。ただ、介護を待つわけにはいかないので、月額30万円の老人保健施設を選んだのです。
厚生労働省も、特養の不足は分かっていて、当面の対策として要介護4以上の高齢者を優先入居させることにしました。自宅で暮らす「要介護4、5」の待機者は、8万7000人もいて、その解消が緊急を要するからです。ただ、要介護3以下でも特養が必要な人はたくさんいるので、「待機高齢者解消」は重要な政策目標になっていくのではないでしょうか。
■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。