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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活

【第24回】年金削減が始まった 2014.04.08
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【森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活】一覧はこちら

今年4月から、年金の給付水準が0・7%引き下げられることが決まりました。デフレ時代の物価スライド未実施分を解消するための措置です。年金は、物価が下落した場合には、それに合わせて給付水準が引き下げられるルールになっています。ところが、実際には昨年まで続いたデフレのなかで、政治的な配慮から引き下げが完全には実施されませんでした。未実施分は2・5%あったのですが、それを解消するために昨年10月から年金給付が1%引き下げられ、加えて今年4月から1%、さらに来年4月から0・5%引き下げられる予定になっていました。


昨年10月の年金給付削減は予定通り実行されたのですが、今年4月は、1%削減の予定が0・7%削減に圧縮されました。厚生労働省によると、昨年の現役世代の手取り収入が前年比0・3%増えたので、その分を差し引いたのだと言います。つまり、現役世代の手取り収入の増加率だけ、年金を増やしたという説明なのです。

この説明に、私は違和感を覚えました。それは、10年前の年金制度改正で、現役世代の賃金に比例して年金給付の水準を改善するという考え方は、取りやめになったからです。本来は、昨年の消費者物価の上昇率に応じた物価スライドだけが行われるはずです。そこで昨年の消費者物価の上昇率をみると、0・4%となっています。つまり、4月からの年金は、物価スライド未実施解消分のマイナス1%に、昨年の物価上昇分0・4%を加えて、0・6%削減になるのが本来の姿なのです。

わずか0・1%とは言え、本来よりも年金給付の削減率が大きくなったということは、この10年間実施されることのなかったマクロ経済スライド、つまり年金給付水準そのものの削減が始まったのだと、私は思います。おそらく来年以降も年金改善は物価に追いつかない状況が続くとみられます。公的年金がついに厳しい時代に突入したのです。

 

■森永卓郎

1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。


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