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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第22回】クルージングブームの背景 2014.03.18
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旅客船に乗って、各地を周遊するクルージングが大きなブームを迎えています。
昔からニーズはありました。「定年を迎えたら、夫婦二人で、船に乗って世界中を旅しよう」というのは、夫が抱える典型的な夢でした。ただ、その夢を実現する人は、あまり多くありませんでした。夫婦二人で、最低でも100万円以上という高価格が、ネックになっていたのです。ところが、その価格の壁が、劇的に崩壊しました。4泊5日のクルージングだと、5万円を切るツアーも登場しています。クルージングの場合は、宿泊費から食事、エンターテインメントまで、すべて料金に含まれる場合が多いので、普通に国内旅行に出掛けるよりも、トータルコストが安くなっています。
なぜそんなに安くなったのか。一番大きな理由は、外国船の参入です。もともとクルージング文化の根付いている海外では、格安のクルージングが存在していました。そうした格安クルージングが、日本を舞台にビジネス展開し始めたのです。ただ、日本の規制で、外国船は日本だけを寄港地とするツアーを組めません。
ところが、旅行会社が、釜山やサハリンなど、日本に近い海外寄港地を1カ所航路に組み込むことで、この規制を逃れたのです。もちろん、世界を巡る欧米の本格クルーズ船も日本に寄港する回数が増えました。クルーズ船は寄港地に停泊する時間が短いので、入国手続きに時間がかかると嫌われるのですが、日本の入国審査のスピードアップの努力が評価されたのです。また、近い将来には、機械で顔認証や指紋照合を行う自動化ゲートも、設置される見通しとなっています。
こうした変化のなかで、今後クルージングがさらに大きな市場となっていくことは、間違いないでしょう。とりあえず、4泊5日くらいの短いツアーから参加してみてはいかがでしょうか。それくらいの期間なら、夫婦げんかになる時間もなく過ごせると思います。
■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。