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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第17回】終末期をどう過ごすのか 2013.08.13
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私自身、十年前には考えてもいなかったのですが、最近になって自分の終末期をどう過ごすのか、真面目に考えるようになりました。父の最期を看取ったことと、自分もそろそろ高齢期にさしかかってきたからです。
ずっと元気だった父は、最後の数年間は寝たきりでした。最初は妻が中心になって自宅で介護を続けていたのですが、要介護4になって、とうとう限界を迎えてしまいました。そこで近所の老人保健施設でケアをしてもらいました。幸い、我が家から車で5分くらいのところで、毎日通えたのですが、父は最後まで自分の家にこだわっていました。もう一つの問題は、費用でした。施設の利用料が月30万円、その他の費用を加えると年間500万円はかかっていたと思います。当面は大丈夫でしたが、もし20年続いたら負担は総額1億円に達します。さすがにそれだけの負担を想定すると、自分のときはどうするのか悩んでしまいました。ただ、最近一つの答えがみえてきました。
私は朝日放送の「キャスト」というニュース番組のコメンテータをしているのですが、番組で尼崎の逢愛の家というホスピスを特集したのです。4年前にオープンした逢愛の家は、末期ガン患者や要介護5の高齢者も受け入れています。それなのに月額負担は12万円という低コストになっています。その理由は、空き家を利用して、近所の住人がパートで働くなど、徹底的にコストを抑えているからです。ただ、そうした手作りの介護の結果、とてもアットホームで、まるで家族と暮らしているような生活を送ることができるのです。
もちろん大金を出せば、もっと素晴らしい老後が送れると思います。ただ、お金がなくても、地域で知恵を絞れば、安心できる老後を手作りするこがは可能なのです。兵庫県は、逢愛の家のような施設に対して公的支援ができないか検討中とのことです。これが全国に広がればいいなと心から思います。
■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。