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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第14回】生き甲斐の新しい形 2013.06.10
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お金と生き甲斐は、高齢生活を支える車の両輪です。その生き甲斐の新しい形に、最近、私は出会いました。
先日、コメディタッチのミニドラマに出演したのですが、学生服姿のエキストラで参加していた女性の年齢がちょっと高そうだったので、声をかけてみました。そうしたら72歳だと言うのです。ご本人は役者さんではなく、お笑い芸人が本職で、しかもお笑い芸人を始めたのが67歳のときだったそうです。最初はコンビでやっていたそうですが、最近はコンビを解消して、ピン芸人としてやっていると言います。お金は全然稼げないけれど、仕事が楽しくて仕方がないそうです。
歌舞伎の世界が典型ですが、芸事というのは、小さい時から始めないとモノにならないというのが常識でした。いまでも一流の人はそうしたケースが多いようです。ただ、一流でなくてもよいのであれば、歳をとってから始めても、何とかなるものです。しかも、ここのところ、一流でない人にも活躍の舞台が広がってきました。それがインターネットの動画投稿サイトです。
いま多くの若者がニコニコ動画のような投稿サイトで自分のパフォーマンスを披露しています。しかもその分野は、歌、ダンス、演劇、お笑い、朗読、大道芸など多岐にわたっています。そうしたなかから人気を集めて、メジャーデビューを果たす人も出てきました。もちろんメジャーになる人は、ほんの一握りですが、メジャーになれなくても、自分を支持してくれる視聴者を相手にパフォーマンスをしていると、「表現者」としての大きな満足感を得られるといいます。
ただ若者たちが異口同音に言うのは、生活が厳しいということです。アーティストが食えないという現象は、古今東西変わらないようです。ただ、そうした問題は、年金があれば解決できます。年金生活に入ったら、アーティストになってみる。それは、一つの素敵な生き方ではないでしょうか。
■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。