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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第13回】相続に備えよう2 2013.06.10
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相続のときに一番困るのは、相続税の納税のときに現金がないことです。多くの場合、相続財産のかなりの部分を不動産が占めています。ところが、不動産を処分するのには時間がかかりますし、手続きも複雑です。物納してしまえばよいと思われるかもしれませんが、国はよほどの好条件の物件でない限り、相続税の物納を認めてくれません。
また、思い出のある家を処分するのが、心情的にむずかしい場合もあります。さらに家の場合は分割して相続をするというのも、現実問題として困難でしょう。ですから、きちんと相続財産を分割するためにも、一定程度の現預金か、すぐに現金に換わる金融資産が必要なのです。
わが家の場合は、幸いなことに、高額の不動産がなく、金融資産のほうが多かったのですが、それでも預金が十分というわけではありませんでした。そこで父の遺した金貯蓄口座をすぐに解約しました。金貯蓄口座は、父が亡くなった時の金相場で評価されるということだったので、相続税の申告もその日の相場でしました。解約で戻ってきた金額とほぼ同額です。ところが、相続税の計算と遺産分割の作業がすべて終わってから、税理士さんから電話がありました。金価格の高騰で、父が積み立てていた金は、購入平均単価よりも売却したときの相場が高くなっていたので、別途売却益の申告が必要だというのです。
私はすでに高くなった金相場に基づいて相続税を払っているのだから、そこにさらに売却益を課税するのは二重課税ではないですかと主張したのですが、そういうルールになっているので仕方がないということでした。
その他にも色々なことが発生するので、相続税の申告期限の10ヶ月というのは、あっという間に来てしまいます。ですから、残された家族のことを思うのであれば、あらかじめ相続を考えた資産構成を作っておくことが必要になるのです。
■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。