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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第9回】資産運用をどうするのか 2013.01.10
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政権交代が実現すれば日本はインフレに
最近、老後資金の運用をどうしたらよいのかという相談をよく受けるようになりました。団塊の世代を中心にして、会社を退く人が多いからだと思います。虎の子の退職金を上手に運用して、運用益を年金に加えて豊かに暮らしたい。そう考えるのは、ごく自然なニーズでしょう。ただ、現実は、そううまく行きません。例えば、この15年間で株価や地価は半額になりました。もし15年前に株式投資や不動産投資をしていた人は、資産の半分を失ってしまったことになります。
なぜそんなことが起きるのかと言えば、日本経済がデフレだからです。デフレのときには、物価以上に資産価格が下がっていきます。デフレの時に資産を買う人はほとんどいません。買わないでキャッシュを握っていれば、翌年はもっと安く買えるからです。ですから、この15年間で一番トクをした人は、何も投資せず、ほとんど金利のつかない銀行預金や郵便貯金を持ち続けた人になります。
ただ、気をつけないといけないのは、デフレというのは、異常な経済現象で、戦後、長期間続くデフレに陥った国は、日本以外に一つもありません。デフレを止めようと思ったら、簡単に止めることができるからです。日本は止めようとしてこなかったのです。
ところが、状況が変わってきました。自民党の安倍総裁は、政権を取った場合には、物価上昇率が3%に達するまで、無制限の金融緩和を日銀に求める考えを表明しました。インフレターゲット政策というのですが、この政策が採用されると、日本は確実にインフレに切り替わります。
インフレに切り替わると、株価や不動産価格は急上昇します。早く買わないと高くなってしまうので、買いが殺到するからです。
資産運用は急ぐ必要はありません。ただインフレに切り替わったら、すぐに取り組まないといけません。預金はインフレに弱いからです。その時に備えて、そろそろ小さな金額で練習を始めておきましょう。
■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、最近は「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。