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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活

【第2回】老後の備え、どれだけ貯蓄が必要か 2012.05.24
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【森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活】一覧はこちら

 

 

■厚生年金を満額払えば年金だけで老後は充分?


 老後を迎えるにあたって、最低限どれだけの資金が必要なのか。 その答えを出すためには、まず「貧困とは何か」ということを考えないといけない。 貧困に陥らないというのが、最低限の暮らしの条件だからだ。
 先進国では、所得の絶対額では貧困が決まらない。 世間と比べて自分の所得がどれだけ低いかという比率で貧困が決まる。 OECD(経済協力開発機構)では、相対的貧困といって、世間の半分以下の所得の人を貧困者と定義している。 公的年金の世界でも、基本的な考え方は一緒だ。 現役世代の平均的な手取り収入に対する年金給付の比率を「所得代替率」という。 厚生労働省は、これまで厚生年金のモデル世帯の年金給付が、所得代替率で50%を割らないように制度を設計してきた。 「厚生年金の保険料を満額支払っていれば、老後は公的年金だけで暮らせます。 貧困には陥りません」というのが、政府が発し続けてきたメッセージなのだ。

 

■デフレが終わると給付額ダウン、貯蓄が必要に


 所得代替率が50%以上というルールは、現在でも守られているし、今後も守られる予定だ。 しかし、それは年金給付の受給開始時だけだ。 デフレが終了して、物価が上昇するようになると、毎年年金給付の実質的な削減が行われ、所得代替率はどの世代でも最終的には40%になる。 つまり全員が貧困だ。 所得代替率が50%を切る時期は、世代によって異なる。 若い人ほど早い時期に貧困に陥るのだ。 厚生労働省の推計に基づいて、モデル年金世帯が85歳まで所得代替率50%を守るために必要な貯蓄額は、現在65歳の世帯で92万円、現在35歳の世帯でも356万円となる。 もちろん、厚生年金をフルに加入している人は少ないし、もっと長生きする可能性もあるから、老後の貧困を避けるためには、これよりずっと大きな貯蓄が必要だ。 それでも、1000万円もあれば、貧困転落は防げるだろう。 老後の最低限の必要資金は、けっして非現実的な金額ではないのだ。

 

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■森永卓郎
1957年東京生まれ。 経済アナリスト。
東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。
多数の著書を手掛け、最近は「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。
ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。


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