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聖マリアンナ医科大学病院 スーパー医師による医療情報
- 希少疾患である慢性活動性EBウイルス病の克服に向けて~血液・腫瘍内科 主任教授 新井文子先生 2025.03.25
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慢性活動性EBウイルス病(Chronic active Epstein-Barr virus 病:CAEBV)は、非常に稀な病気、希少疾患です。世界中のほとんどの成人に潜伏感染しているEBウイルスというヘルペスウイルスの仲間のウイルスが、普段は感染しないT細胞やNK細胞に感染することで発症します。感染細胞は体内で異常に活性化し、さまざまな臓器に炎症を引き起こします。発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹といった症状が続くほか、最終的には多臓器不全に至ったり、悪性リンパ腫へ進行することもあります。
残念ながら、CAEBVに対する有効な治療薬は今のところありません。たった一つの根治療法は、造血幹細胞移植、いわゆる骨髄移植です。しかし、全ての患者さんがこの治療を受けられるわけではありません。治療薬の開発が急務です。
このような状況を克服するためには、まずCAEBVの病態をより深く理解することが重要です。私たち、聖マリアンナ医科大学血液・腫瘍内科では、EBウイルスが感染したT細胞やNK細胞がどのように活性化、増殖するのか、患者さんの免疫系をどのように抑制しているのかを解明することに力を注いでいます。また、新たな治療として、ウイルスそのものをターゲットにした治療薬や、免疫系を正常化させる治療法の開発にも取り組んでいます。
さらに、私たちは日本全国の研究者だけでなく、韓国、シンガポール、フランスをはじめとする海外の研究者とも協力し、CAEBVの治療法開発に挑んでいます。こうしたグローバルな協力体制を活用し、より広範な視点と技術力で、希少疾患であるCAEBVの克服に向けた道を切り開こうとしています。
希少疾患の治療法開発には多くの困難が伴います。しかし、私たちは患者さんたちに希望を届けるべく、そしてCAEBVの克服が他のウイルス関連血液疾患の治療の道を開くと信じて、日々努力を続けています。すべての患者さんを治す、そのことこそ私たちの目標です。■取材協力
聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市宮前区菅生2‐16‐1)
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