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聖マリアンナ医科大学病院 スーパー医師による医療情報

肺気腫を気管支鏡で治療する? 呼吸器内科 峯下昌道先生 2024.07.03
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呼吸器内科 峯下昌道先生

 聖マリアンナ医科大学病院の呼吸器内科では気管支鏡による診断や治療に力を入れています。気管支鏡は気管・気管支・肺を対象とした内視鏡で、肺がんや感染症診断のための細胞や組織の採取や、異物や腫瘍摘出等の治療に使用します。今回は2023年12月に保険承認された重症肺気腫に対する気管支鏡的肺容量減量術(BLVR)について紹介したいと思います。

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主として喫煙により引き起こされた炎症で気管支が細くなり、肺胞も壊れて肺気腫が生じることで、吸った空気をスムーズに出せなくなっていく病気です。禁煙、吸入薬、理学療法等で治療しますが、進行すると吐けなくなった空気で気腫が膨張して肺内を占拠し、息を吸う時に胸の筋肉や横隔膜に大きな負担をかけるため、ますます息が苦しくなってきます。このような膨張した気腫部分を切除し、残った肺の呼吸を楽にする目的で肺容量減量手術が行われますが、症状が良くなる患者さんがいる一方で、肺を切除するため体への負担が重く合併症の頻度も高いため、日本での実施症例数は年間30件程度にとどまります。

 今回ご紹介するBLVRは吸気時には気流を閉塞し、呼気時には末梢からの空気や粘液の排出が可能な一方向弁(気管支バルブ)を気管支鏡を用いて気管支内に留置することで治療対象の肺をしぼませて容量を減らし、切除するのと同様の効果を期待する内視鏡治療です。

 もちろん気管支バルブで効果が得られるための様々な条件をCT等で十分に確認して治療を行う必要がありますので、全ての重症肺気腫の患者さんに行えるわけではありません。また肺は切除しませんが、気胸や感染症などの重篤な合併症のリスクがあります。日本で初めて導入される治療でもあり、まず国内15施設(東京・神奈川では当院を含む3施設)で医療従事者の教育をはじめとする治療開始に向けた準備が進められています。もしこの病気でお苦しみの患者さんがおられましたらご相談頂ければと思います。 

■取材協力

聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市宮前区菅生2‐16‐1)

☎044‐977‐8111㈹


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