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清水国明さんの国明式災害生存術
- ときめきこそが、今を生きる力になる 2012.03.12
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いつからだろう、小便器の前に立つと「ふぅー」っと長いため息をついてしまう癖がついたのは。
どこからか、「おいおい」と呼ぶ声が聞こえた気がしたのだが、なんだかとても親しい身内の感じがして、すぐには返事もせずに放尿の快感に浸っていた。
するとまた「おい、お前いつまで俺をシッコのためだけに使っているつもりなんだ?」と股間から。なんだ愚息かぁ。
「どした、なんか不満でもあるのか?」
「お前、ホントいい加減にしろよ。もう何か月いい想いしてないと思っているんだ。いつもいつもシッコにばっかり使いやがって、臭っさくてたまらんだろが」
「いやぁ、心がけてはいるのだがなぁ」
「あのね、もっと積極的にちょっとのチャンスも逃さずに、まるでアニマル、種馬と呼ばれていたあの頃のように…」
文句の途中でシッコが終わり、愚息の勢いもフェードアウトして、ぷるっとひと震えの後、チャックの中に消えた。
こんな息子のためにも、頑張ってあげなければと思う。けれどしかし、この歳になってくるとなかなかときめくような出会いがない。出会いがあってもときめかない。ときめいたとしても、そこから今一歩踏み出す気力がみなぎってこない。こうしてやがて我が息子は、排せつ器としての役割だけになってしまう運命なのだろうか。あまりにも不憫である。
「愛することに理由はいらない。愛しているときだけ、人は生きている」のだそうである。
年明け早々に母が85歳で亡くなった。いつも手をつないで寝ていた父と母は、病院でも評判のオシドリ夫婦だったが、最愛の人を失ったとたん父も生きるのをやめた。
すべては母を喜ばせるためだった温泉旅行や食事にも、まったく興味を示さなくなったのだ。愛する人が生きているときだけ、父も生きていたのだろう。88歳のこの男と我が息子を蘇生させるには、新しいときめきが必要である。今を生きていなければいつかくっきり死ぬこともできないのだから。
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タレント・多毛作倶楽部 代表