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清水国明さんの国明式災害生存術
- 第1話~自然が教えてくれた~ 2007.02.06
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ぼくにとって自然は本当に楽しい学校です。
私は今、河口湖近くの森の中で自然暮らしと称するアウトドア三昧の生活を送っています。東京までは一時間半くらい。週に何回か出かけていって、忘れられない程度テレビやラジオの仕事をして、あとは毎日、ログハウスを建てたり、魚釣りに出かけたり、カヌーやナイフや釣り竿を作ったり。…のはずでした。ちょっぴり働いて、たっぷり遊ぶ夢の楽園構想。やってみるとなかなか大変です。
森の中に暮らしていても、意外となんだかんだと用事に追われ、うかうかしていると他人のための時間ばかりが過ぎていきます。その代わりに得るのがお金だったりするのですが、そのお金で失った自分の時間が買い戻せるのかというと、そんなに沢山もらえる訳はないので、無理です。結局自分の期待には応えられないまま空しい時間だけが過ぎてゆきます。けれど! もう残り時間が少なくなってきました。この先の貴重な時間を、誰かのご機嫌を伺ったり、まわりの評判を気にするようなことに費やすのはもったいないと思います。
聞いた話ですが、世の中には次の4つのパターンの人しかいないらしいです。
幸せの順番で言うと「好きなことしている金持ち」と「好きなことしている貧乏人」、その下に「嫌いなことしている金持ち」がいて、さらにその下に「嫌いなことしている貧乏人」がいる。さしあたり今の私は、好きなことしている貧乏人、の類だと思います。
都心に暮らしていたつい昨日までは、嫌いなことして貧乏でしたから、自然暮らしをはじめたことで、一気に2番手までは上がれたようです。
自然暮らしは衣・食・住・遊なんでも手作りです。必要なものは作ることができる。作れないものは必要ないものと決めつけて、それを必要としない生活へと変えることから始めました。必要なものって意外と少ないもんです。高級な外車や大きな家も、今の自分にとってまったく必要なものではありません。どうしても今必要なものは……ないですね。
……は、時間経過。40分考えてしまいましたが、ありませんでした。
「どうしても」というしばりを外して、今必要なもの、ならあります。睡眠時間、体力、思考能力、視力、握力、集中力、持続力、それに整理整頓力なんてものもあるといいですね。あ、それと文章力も。
森の中でやっていることは、根っから好きなことばかりですから、いつも限界までやってしまいバタンと倒れるように寝ています。けれど不思議なことに、限界点は日々上昇するものなんですね。
私は三十歳からオートバイに乗り始め、四十歳までサーキットを走るロードレースにどっぷりはまっていました。自分のベストタイムを0コンマ何秒か縮めるためにサーキットの周回を重ねていたのですが、今日はちょっと気分が乗らないから、無理せずベストより1秒落して走っておこう、と余裕の練習走行をしてしまうと、自分のベストタイムはきっちり1秒悪くなっていました。限界点が下がってしまうのです。毎回自分のベストタイムにチャレンジしていると、ある日ひょいと限界を超えて次のステップに進むことができます。もう歳なんだからと、無理しないように生きていると、限界点をどんどんと右肩下がりにしてしまうのではないでしょうか。
体力の衰えなんて工夫次第でなんとでも補えます。自分で可能性を絶ってしまう気力の衰えにこそ要注意です。「無理をせずに生きる」は「好きなことをせずに生きる」と知るべきでしょう。
■清水國明(タレント・自然暮らしの会代表)