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一期一筆
- アトツギ甲子園 2024.04.19
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日本列島を桜前線が北上中である。主役はソメイヨシノ。この桜は、初めて生まれた木を基に、接ぎ木で増やされてきた。大きく育ってほしい大会がある。中小企業庁が2020年から取り組んでいる〈アトツギ甲子園〉のことである。
全国の中小企業の若い後継者たちが、実家の経営資源を活用した新規事業のアイデアを競う大会で、先月8日の第4回決勝大会には、地方の5ブロックを勝ち抜いた代表15人が出場した。参加資格は今後、家業を継ぐ39歳以下の後継者。
4分間のプレゼンテーションを行って事業内容と熱意を伝え、新規事業の実現可能性や社会的意義、家業の経営資源を活用できているかなどの基準で審査される。優秀者には、各種補助事業への優遇措置などの特典がある。
今回の大会には過去最多の211人がエントリーした。最優秀賞の経済産業大臣賞受賞者は、マルキ建設(京都府丹後市)3代目後継候補の堀貴紀さん。荒廃農地と公共残土を起因とする土砂災害の解決策を提案。荒廃農地を公共残土で整備し、その農地で収穫した米で米粉を生産するビジネスプランを披露した。
25年には、70歳の平均引退年齢を超える経営者の企業が約245万社になり、約127万社が後継者不在による廃業・倒産の危機に直面すると予測されている。
深刻な問題だが、創業200年以上の日本の企業数は20年時点で1340社。世界全体の66%を占める。長寿企業最多の国のDNAも内包しているであろうアトツギたちのベンチャー型事業継承。ソメイヨシノのように満開の花を咲かせてほしいと思う。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)