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犬の幸せとは 2022.11.21
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 犬は不思議な動物だと思う。多くの動物の中で、自由と野生を放棄し、人との生活を選択した動物は犬だけだろう。しかも大半は番犬としてである。人との最初の出会いは、犬の祖先が狼だった頃のはず。人と、人に興味を抱いて近寄ってきた狼との間に何があったのだろうか。想像するだけで好奇心がくすぐられる。
 そんな思いの中で読んだ北里大学名誉教授で、青森県八戸市に健康動物病院を開業している獣医学博士・樋口誠一先生の著書『犬の幸せの感じ方』(ごま書房新社)は、楽しい内容だった。犬とはどういう動物か。犬は何を求めているか。犬はいかに生きるか。犬の本質を獣医学と獣医師の視点で捉えた〝犬生論〟であり、飼い主向けの人生論でもあり、考えさせられた。
 710万6000頭。一般社団法人・ペットフード協会が調べた昨年度の犬の国内飼育頭数である。近年は家の外での番犬の役割も卒業し、飼い主の〝家族の一員〟として飼い主家族と室内で暮らす生活に様変わりした。
 栄養豊富なドッグフードを食べ、トリミングやエステに通う〝セレブ生活〟で肥満やストレスを抱える犬も増えているという。「犬の病気の原因は飼い主」と言われる所以である。高齢者が高齢犬を介護する〝老老介護〟の問題もある。犬は今、幸せなのだろうか。
 見張り番としての能力や人の気持ちを察する能力、癒しの能力を持つ犬。人も犬も共に幸福に生きていくにはどうあるべきか。樋口先生の著書の言葉を愛犬家の皆さんに贈りたい。〈真に幸福な犬とは幸せな人に飼われる犬。飼い主の幸福なくして犬の幸福はない〉。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)


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