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一期一筆
- 『甘~い♡ひととき』 2022.07.19
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疲れると甘~いひとときが恋しくなる。至福の時間は身も心も癒してくれる。身体が要求するのである。今回も格別だった。頂いたのは、日本三大饅頭の一つである備前岡山の「大手まんぢゅう」だった。天保八年(一八三七年)に、大手饅頭伊部屋の初代・伊部屋永吉が考案し、岡山城大手門附近に店を構えたという老舗の饅頭である。
良質の備前米を使った甘酒に小麦粉を混ぜ、発酵させる。できた生地で北海道産小豆を白双糖で練り上げた漉し餡を薄く包み、蒸した逸品。甘酒のコクが餡の甘さとほどよく調和し、今回もまろやかな味わいを醸し出してくれた。
饅頭は、中国・三国志でおなじみの諸葛孔明が、戦の際に荒れ狂っていた川を鎮めるための捧げ物として考えた肉饅頭がルーツ。わが国の餡入り饅頭は都内・中央区に本店を構え、「志ほせ饅頭」で知られる老舗中の老舗・塩瀬総本家の始祖で、中国から来朝した林淨因が考案、貞和五年(一三四九年)に奈良で創業したのが始まりという。
「志ほせ饅頭」と「大手まんぢゅう」、それに奥州街道・郡山宿の薄皮茶屋で柏屋の初代・本名善兵衛が嘉永五年(一八五二年)に創業、考案した「柏屋薄皮饅頭」が、わが国を代表する三大饅頭と言われている。
ちなみに三大銘菓は、石川県金沢市・森八の「長生殿」、新潟県長岡市・越乃雪本舗大和屋の「越乃雪」、島根県松江市・風流堂の「山川」。三大和菓子処は京都、金沢、松江である。饅頭、落雁、羊羹……。両刀遣いと言われようが、和菓子は甘~いひとときの伴侶。次は「志ほせ饅頭」を食べたくなってきた。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)