女優業に留まらず、映画監督や舞台演出、ラジオなど、多方面で活躍する黒木瞳さん。１月31日公開の劇場アニメ『ベルサイユのばら』ではナレーションを務め、「夢と希望、愛が詰まった何度見ても感動する作品。その物語を壊さないよう心がけました」と話します。

変わらないエンターテイナーの精神。仕事を続けられる幸せ

　タカラジェンヌとして上った初舞台から40年以上が経ちましたが、黒木瞳さんには変わらない信念があります。
　「お客様に元気になってもらいたい、誰かの心の支えになるかもしれないという気持ちです。エンターテインメントの世界が好きですし、喜んでいただく皆様の笑顔や声からいつもパワーをもらっています」
　女優業だけでなく、現在は演出などでも才能を発揮していますが、「芸能の仕事を続けられることが何より幸せ」と話します。芸能の世界へ飛び込むきっかけは、高校1年生のときに観た宝塚の舞台でした。
　「宝塚の華やかな衣装、煌びやかな世界に感激しました。そのとき観たのが『ベルばら』です。オスカルとアンドレの恋物語に感動したことを覚えています。宝塚に憧れを抱き、18歳のときに記念で受験しました。
　今回、『ベルばら』が映画化されると聞き、民衆のひとりでもいいから参加させてほしいと申し出ました。ナレーションという大役を任されたこと、一緒に作品を作るお役目をいただけたことがうれしかった」
　18世紀後半のフランス。同盟のためオーストリアからフランス宮廷に嫁いだひとりの少女、それが後のマリー・アントワネットです。彼女に仕えたのが男装の麗人オスカルでした。革命期のフランスで時代に翻弄されながら愛に生き、運命と闘った人々を描く名作が新作映画として帰ってきます。
　「ファンの方は、どんな風に切り取ったか気になるでしょうし、観たことがない方は劇場で美しい物語に触れてほしい。世代、国境を超えて愛される作品になったと思います」
　原作の連載開始は昭和47年、累計発行部数は２０００万部以上。令和となった現在も色褪せない物語は、親から子、そして孫へ語り継がれています。
　「人々を魅了したのは、池田先生がオスカルなど架空の人物を史実に基づいた物語の流れの中に登場させ、夢と希望、愛など普遍的なものを描いた作品の強さではないでしょうか。史実に基づいているからこそ歴史の残酷さがあり、それを繰り返し今があると思うと一層胸が震えます」
　アニメ映画である本作の楽しみ方を聞くと、黒木さんならではの答えが返ってきました。
　「宝塚の場合は、この方が演じたオスカルがすてき、この方のアンドレが印象的など、役者への思い入れが加わります。アニメーションはそれがないので原作に忠実ですし、登場人物に感情移入しやすいです。それに愛や人生、苦しみを表現した劇中歌にも注目してほしいですね」
　黒木さんの宝塚在籍時には『ベルばら』の公演がなかったそうです。しかし、昭和49年の『ベルばら』初演時に演出を担当した名優・長谷川一夫さんの指導は黒木さんにも受け継がれています。
　「長谷川先生はこんなこと仰ったそうです。役者が舞台上で苦しい体勢をしなければ、お客さまからは決して美しく見えない。この教えは私にも身についています。
　宝塚を辞めてからも出会いがありました。多くを教わり、そのご縁が今の私を形作っていると思います。また、私が演じた数々の女性たちから人生を学ぶこともありました。
　ベルばらのオスカルもすてきな女性です。貴族でありながら立場を捨てて民衆を守り、アンドレを愛した。もし、宝塚時代に機会があったなら…、やっぱり演じたかったのはオスカルです。ただ、娘役だった私の願いは叶わなかったかもしれませんね（笑）」

 ■ヘアメイク：黒田啓蔵、スタイリスト：後藤仁子　　タートルニット￥36,300・シビラ（イトキン　カスタマーサービス☎03-6870-2304）、スカート￥85,800・KEITA　MARUYAMA（☎03-3406-1935）、ピアス￥385,000・ベルシオラ（☎0800-500-5000）、ネックレス￥179,300・カプリシャス（エスジェイ　ジュエリー＜カプリシャス＞☎03-3847-9903）、リング¥143,000（展開店舗限定販売）・アガット（☎0800-500-5000） ※すべて税込

■プロフィール

女優／黒木 瞳

これまでの映画作品においてWEIBO ACCOUNT FESTIVAL2022 最優秀主演女優賞受賞。2023年6月公開映画「魔女の香水」では主演。2024年、14年ぶりにディナーショー「for you」を演出・出演。2025年1月からはリーディングエンターテイメント「ルビンの壺が割れた」の演出・出演も手掛ける。

■インフォメーション

劇場アニメ『ベルサイユのばら』

1 月 31 日㈮全国公開

■原作／池田理代子
■監督／吉村 愛
■キャスト：オスカル：沢城みゆき、マリー・アントワネット：平野 綾 ほか

ナレーション：黒木瞳