端正な顔立ちと逞しい体躯を持ち、和服もさらりと着こなす髙嶋政宏さん。出演した作品では独特の存在感を放ち、その怪演ぶりが度々話題になることも。そんな髙嶋さんが出演する舞台『中村仲蔵～歌舞伎王国 下剋上異聞～』が２月６日から始まります。お話を伺いました。

現代社会の閉塞感を突き破る、実話ベースの下剋上物語

　歌舞伎が黄金期に向かう江戸時代中期、彗星の如く現れた初代・中村仲蔵。血筋が重んじられる歌舞伎界に裸一貫で飛び込み、己の努力と才覚で這い上がった波乱万丈な彼の人生は、今も落語や講談で語り継がれています。そんな仲蔵の物語を、痛快無比なエンターテインメント作品に仕上げたのが、２月６日から始まる舞台『中村仲蔵～歌舞伎王国 下剋上異聞～』です。髙嶋さんは、仲蔵の才能にいち早く目を付けた当時の大スター・四代目市川團十郎を演じます。
　「いかに子どもの頃から歌舞伎をやっていた人のように見せるかが課題ですが、実際はやっていないので、もう開き直るしかありません（笑）。ただ、本物の四代目市川團十郎は誰も見たことがないわけですから、そこは強みでもあります。色々な資料を読むと、それまでの歌舞伎俳優にはないような腹黒さがあったと書かれているので、その辺りを意識できればと思っています。あとは、これまで自分が時代劇で培ってきた着物の所作や裾捌きなんかを信じて稽古を重ねるしかないですね」

 舞台は腹六分、心構えは修行僧。先輩役者から得た多くの学び

　中村仲蔵は、最下層の大部屋役者から苦難を乗り越え、一代で「名人仲蔵」と称されるまでにのし上がった人物ですが、髙嶋さんにも、いわゆる“下積み”と呼ばれる時代はあったのでしょうか。
　「デビューした時は両親も芸能界にいたので、僕は一段台に上がった状態で光を浴びていました。でもやっぱり仕事をしていくうちに、こいつ何もできないんだって気づかれて。それから舞台をやり始め、テレビ局のプロデューサーに『ちゃんとできるようになったじゃん』と言われるまでの“中積み”みたいなものはありましたね。当時衝撃的だったのは、舞台の稽古で物凄く入り込んで絶叫しながらやっていたら、『あなたがやっていることは、こちらに何も伝わらない』と言われたこと。テレビドラマは１００入り込んだ奴が勝ちだけど、舞台では自分の角度や照明さんの位置とかを考えながら、６割ぐらいでやらないとダメなんです。確かに『いやー、今日はやり切った！』なんて思った日に限って、お客さんには不評だったりするんですよね」
　本当に多くのことを学ばせてもらったと話す髙嶋さん。中でも美輪明宏さんの「舞台中は修行僧の心構えでいなさい」という言葉が心に深く刻まれているそうです。
　「舞台を観にいらっしゃるお客さんは何万円も払って来ていて、地方の人だったら交通費もあると。それに比べたら、あなたの人生のたった数か月間、修行僧のようにして何の苦労があるのと。とても厳しい言葉ですが、非常に感銘を受けましたね。美輪さんにはそういう芝居以外のことも教えていただきました」
　先輩たちからの教えや、積み重ねた経験を胸に、いつも真っ直ぐ役にぶつかってきた髙嶋さん。舞台『中村仲蔵』では、難役・市川團十郎をどう演じるのか、期待は高まります。
　「歌舞伎と言うと、敷居が高いとか、高尚な演劇なんじゃないかと感じる人もいると思います。でも昔、ジョン・レノンさんが歌舞伎を見て涙を流していたそうで、やっぱりそれくらい皆が楽しめて、感動するものなんですよね。そんな歌舞伎を、本作では更にテンポのいいエンターテインメントに仕上げているわけですから！ これはもうこの冬一番の注目作になること間違いなしです」

■プロフィール

俳優／髙嶋 政宏

1965年東京都出身。成城大学法学部在学中の1987年に映画『トットチャンネル』で俳優デビュー。同作及び映画『BU・SU』で、第11回日本アカデミー賞新人俳優賞、第30回ブルーリボン賞新人賞、第61回キネマ旬報新人男優賞などを受賞。以降、映画・ドラマ・舞台で活躍。近年では料理や音楽など多彩な趣味を生かしてバラエティ番組にも出演し、活躍の幅を広げている。

■インフォメーション

Sky presents

「中村仲蔵」～歌舞伎王国 下剋上異聞～

作／源 孝志　

演出／蓬莱竜太

出演／藤原竜也　市原隼人　浅香航大　池田成志　髙嶋政宏 ほか　

会場／東京建物Brillia HALL

日程／2024年2月6日（火）～25日（日）　

料金（全席指定・税込）／特等席：平日13,000円、土日祝13,800円　一等席：平日11,000円 、土日祝11,800円 ほか）

【問】ホリプロチケットセンター　

03-3490-4949（平日11：00～18：00／土日祝休）