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芸能人インタビュー
- たった一言のセリフに心を 動かされる。そんな俳優に 少しは近づけているのかな 2022.03.22
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演じる役ごとに全く違う顔を見せ、唯一無二の存在感を放つ俳優・段田安則さん。4月4日から始まる舞台『セールスマンの死』では主人公ウィリー・ローマンを演じます。これまで数々の名優が演じてきた大役に挑む心境や作品の魅力についてお話しいただきました。
世界で上演され続ける演劇界の金字塔『セールスマンの死』
「20歳のときに滝沢修さんの『セールスマンの死』を見たときは『これが本格的な新劇か』くらいの気持ちで見ていたのですが、いま改めて台本を読むと、ちょっと僕の力量では荷が重いような気もしています(笑)。過去に名だたる俳優さんたちが演じていらっしゃるのをご覧になった方には、どうしたって比べられてしまいますから。とは言え、非常に素晴らしい本なので、そこにちゃんと乗っかって忠実にやっていけば、僕なりのウィリー・ローマンが出来上がるのではないかと。僕は基本的に大変なことにはなるべく近づかないようにしているのですが、今回ちょっと近づいちゃって(笑)。まあ、あまり大変じゃないところばかり行っているとダメ人間になってしまうので、たまには向かい合わなきゃなという感じで、今回挑戦させていただくことになりました」
1950年代前後のアメリカ・ニューヨーク。かつては敏腕セールスマンとして鳴らしたウィリー・ローマンも今や会社のお荷物扱い。残り1回となった住宅ローンや車の修理代にも苦労している始末。妻のリンダは夫を尊敬し、献身的に支えているが、30歳を過ぎても自立しない息子たちの存在もウィリーの心をつぶす。ブルックリンの一戸建て、愛しい妻、自慢の息子。一度は手にしたと思った夢は脆くも崩れ始め、行き詰まった彼はついに死を選ぶのだが――。
近代演劇の金字塔たる作品、かつ1年半ぶりの舞台出演に「よしやるぞ!」と気合十分のご様子ですが、その膨大なセリフ量に少しの不安も覗かせます。
「セリフ覚えは割と得意でしたが、過去形です。今はもう覚えたつもりが覚えてないみたいな(笑)。これは誰もが持つ宿命なので言い訳にも何にもなりませんが、セリフが早く言えなくなるとか、前はそこまで飛べたのに今はできないとか、そういう肉体的な衰えは感じるようになりました。気持ちは20代、30代の頃と全く変わらないんですけどね。ただ、本当に何でもない『ありがとう』のセリフでも、年配の俳優さんが仰るとこんなに良いんだなと若い頃に感じた記憶があるので、我々の仕事には年齢を重ねたことによる利点もあるのかもしれません。僕も今年65歳になりましたので、セリフだけでなく、そのセリフに付随してくるものも少しは出せるようになったのかなと思いつつ、そうであってほしいと願っているところです(笑)」現代日本にも通じる普遍的な人間の姿
自身の変化をプラスに変え、さらなる高みへ向かう段田さんですが、理想と現実の乖離に苦悩するウィリーの姿は「年を取るほどに分かる」と仰います。
「自分が思い描いていたものと今の自分とのズレが、なんとなく認められないというのは誰にでもありますよね。そういう仕事や家族に対する複雑な感情は現代の日本に生きる僕たちにも通じるものだし、多くの方に共鳴していただけると思います。決して明るい話ではありませんが、なぜ人間が暗い話や悲劇を見たくなるのかと考えると、やっぱり『これ分かるなあ』と心が動く瞬間に何とも言えない快感があるからだと思うんです。『セールスマンの死』には、そんな心が動く瞬間がたくさん詰まっていますので、ぜひ劇場にお越しいただき、その感覚を味わっていただきたいですね」■プロフィール
俳優/段田 安則
1957年京都市出身。青年座研究所を卒業後、81年、野田秀樹氏主宰の劇団夢の遊眠社に入団。92年の劇団解散まで主力俳優として活躍する。話題のドラマにも数多く出演し、近年ではNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の雉真千吉役や「半沢直樹(TBS)」の紀本平八役などで知られる。読売演劇大賞 大賞・最優秀男優賞など受賞歴多数。
■インフォメーション
パルコ・プロデュース2022
「セールスマンの死」
作/アーサー・ミラー 翻訳/広田敦郎
演出/ショーン・ホームズ
出演/段田安則 鈴木保奈美 福士誠治 林遣都 鶴見辰吾 高橋克実 ほか
会場/PARCO劇場
日程/4月4日(月)~29日(金・祝)
料金(全席指定・税込)/マチネ:11,000円ソワレ:10,000円
【問】サンライズプロモーション東京0570-00-3337(平日12:00~15:00)