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芸能人インタビュー
- オファーには意味があり、 僕にできる何かがある。 求められた役目を全うしたい 2021.01.18
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ストライプのスーツを着こなし、颯爽と歩く舘ひろしさん。ヴィンンテージワインのように、年を重ねるたび男の色気と渋みが増しているようです。1月29日公開の『ヤクザと家族 The Family』、新たな一歩を踏み出す心境についてお聞きしました。
43年ぶりに演じるヤクザ役、家族・ファミリーの絆を描いた注目作
『終わった人』(18年公開)で俳優として賞に輝いただけでなく、チャーミングな着ぐるみ姿が印象的なCMなど、目覚ましい活躍をみせる舘ひろしさん。
「オファーには必ず意味があり、そこには僕にできる何かがあると信じています。だから思い切って他人に自分を預ける勇気が重要だと思っています」
いつまでもチャレンジ精神を忘れない舘さんが、1月29日公開の『ヤクザと家族 The Family』で挑んだのがヤクザ役。昨年、『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた藤井道人監督からのオファーでした。
「刑事やいい人の役が多かったからね(笑)。ヤクザの役は43年ぶりで、正直なところ初めてという感じです。ヤクザを題材にしていますが、家族の愛を描いた脚本が素晴らしく、お受けしました」
1999年、父が覚せい剤で命を落とし、退廃した生活を送る若者・山本賢治。賢治は柴咲組組長を助けたことをきっかけに父子の契りを交わし、新しい居場所《ファミリー》ができます。2005年、賢治に愛する女性と心安らぐ居場所《家族》を求める気持ちが芽生えます。時は過ぎ、暴対法の取り締まりが厳しさを増す2019年。仲間や愛した女性に過酷な現実が突きつけられるなか、賢治が選んだ道とは─。
舘さんが演じたのは義理と人情を貫く柴咲組組長・柴咲博。〝親父〟として行き場を失った賢治(綾野剛さん)を包み込むような温かさで迎え入れます。
「柴咲は温厚な人間ですが、敵対する組の幹部に見栄を張るシーンで感情を露わにします。このシーンは監督と入念に打ち合わせをし、僕もこのシーンに全てをかけました。ぜひご覧いただきたいですね」
血のつながり、絆のつながりという骨太なストーリに散りばめられた繊細な心の機微。観終えたとき共に生きる《家族・ファミリー》の存在を改めて考えることでしょう。
「家族のなかにある思いやり。それが相手に届けばよいですが、すこし掛け違えると悲劇につながるおそろしさがある。それでも相手を思う気持ちがなければ、家族ではいられないんじゃないでしょうか」
時代の移り変わりとともに、行き場を失っていく人々の悲哀を描いていますが、将来への不安や閉塞感は私たちにも漂っているかもしれません。
「いい人でいることが誰しも求められる世の中に、みんな息苦しさを感じているんじゃないかな。理想や正しいことを求め、突っ走りすぎた結果なのかもしれません。もう少しゆるくても、いいんじゃないかなと思っています。
実は俳優という仕事も少し似た部分があります。正しいこと、たとえばNGを一切出さない俳優にはすばらしい才能があります。だけど、それが観る方にとってよい役者と言えるでしょうか。石原(裕次郎)も渡(哲也)も演技はうまくなかったし、石原プロの伝統を受け継いだ僕も下手です(笑)。けれど、たどたどしいセリフ回しだったり、いびつな演技の方が、観た人の心に残る俳優なんじゃないかな」
舘さんに流れている偉大なふたりの教え。石原プロが区切りを終えた後も、確かに受け継いでいく覚悟を固めています。
「考えるのではなく、感じたように芝居すればいいと教えていただきました。ふたりの遺志をいい形でつないでいきたいし、念願だった映画をいつか自分たちの手でなんとか作りたい。それが今の僕に求められている役目だと思っています」■プロフィール
俳優/舘 ひろし
1950年愛知県生まれ。76年に東映映画『暴力教室』で俳優デビュー。82年にドラマ「西部警察」(79〜/EX)に出演し、83年に石原プロモーションへ。36歳で主演した「あぶない刑事」(86〜/NTV)で大ブレイク。アクション、コメディー、ラブロマンスなど幅広く活躍。『終わった人』(18)で第42回モントリオール世界映画祭で最優秀男優賞。20年に旭日小綬章を受章。
スタイリスト/中村抽里 、 ヘアメイク/岩淵賀世
■インフォメーション
ヤクザと家族 The Family1月29日㈮全国公開■監督・脚本:藤井道人
■出演:綾野剛
尾野真千子 北村有起哉市原隼人磯村勇斗/寺島しのぶ舘ひろし