良家の娘から艶やかな大人の女性まで、シリアスもコメディも自在に演じる一路真輝さん。取材中もテキパキと質問に答える聡明で快活な一路さんが、９月に開幕する『リハーサルのあとで』に出演されます。ご自身にとって〝挑戦〟だと話す舞台への意気込みをうかがいました。

自らをとことんまで追い込む舞台『リハーサルのあとで』

凛々しくて涼やかな佇まい。けれど目を細めて笑う顔は何とも愛らしい。女優・一路真輝さん。宝塚歌劇団トップスターとして活躍し、今やミュージカルからストレートプレイまで的確に演じられる、演劇界にとって本当に大切な存在。女優として日常でのこだわりもさぞ強い…と思いきや「全然ストイックな生活はしていない」と一笑。
　「30年以上も舞台に立っていると、脳から送られてくるんです。今これが必要って。意識しなくても本能が私の体の隅々までをコントロールしている感じです」
　本能から女優。そんな一路さんの本能が〝ドキドキ〟すると告げるのが、今回出演される舞台『リハーサルのあとで』。演出家と女優が稽古の後で演劇や芝居などについて語る３人芝居。静かに激しくぶつかり合う感情と響き合う魂。スウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマンが作り上げた刺激的な映画を舞台化、濃密な人間の姿を圧倒的な言葉とともに描きます。一路さんの演じるラケルは、女優として女性としての苦悩を抱え、現実とも幻想とも知れない世界を揺れ動く難しい役どころ。
　「今回の舞台『リハーサルのあとで』は、役者や演出家の目線で書かれているので、私はきっと役を引きずるだろうなって（笑）。逆に言うと、すぐに切り替えられるような役ではないと覚悟しています。自分自身を一度ぐちゃぐちゃに追い込んで、どん底まで落とさないと入りこめない役だって。この７、８年でミュージカルから世界が少しだけ広がり、やっと女優としての居場所を与えられた私にとって、この作品はまさに挑戦そのもの」

三人の男女が生み出すスリリングで濃密な時間を劇場で!!

　 今からが女優の始まりと言う一路さん。その言葉には、女優としての存在に意味を見出せた自信があふれています。
　「私はストレートプレイも好きでよく観ますが、中でも『女の一生』を演じられた杉村春子先生の、純粋な少女が目の前で本当に成長していくような演技に圧倒されたのを覚えています。その杉村先生の言葉に、女性は皆女優という意味合いのものがあると聞き、確かにそうだって感じました。女性は人生のあらゆる場面でさまざまな役割を求められ、そのすべてに最大限の努力で応えている。私も親として女優として努力するうち、あぁ、女性ってみんな頑張ってるんだ！ってわかり、同時に、私も含め女性はさまざまな顔をもちながら〝女性〟を生きているんだって思ったんです。それからは、すべてのセリフが自分の中で響くことが多くなったし、私は、私の身体や言葉を通して、女性の思いを代弁していると思っています。少し大げさかもしれませんが。今回の舞台でも、ラケルが母として女優として、つまり女性として苦悩している姿は私には痛いほどわかります。きっと皆さんの心にもラケルの存在、言葉は響くと思います。
　とにかく、役者3人の集中力が、お客様を物語の世界へと引き込みます。そこから生まれる劇場全体を包む一体感は、素晴らしい演劇体験です。同じ空間で同じ空気を共有しながら、お客様と作り上げていくお芝居だと感じています。『リハーサルのあとで』で出会う演出家、役者、お客様がどんな化学反応を起こすか、今からすごく楽しみ！」

■プロフィール

女優／一路 真輝

宝塚歌劇団トップスターとして『風と共に去りぬ』、『ベルサイユのばら』などに出演。退団後は、東宝ミュージカル『王様と私』『アンナ･カレーニナ』など多くの話題作に出演。卓越した歌唱力からライブも精力的に開催している。1996年第22回菊田一夫演劇賞、2004年第12回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。2016年第37回松尾芸能賞優秀賞受賞。

■インフォメーション

地人会新社第９回公演

『リハーサルのあとで』

 作／イングマール・ベルイマン

訳／岩切正一郎　

演出／栗山民也

出演／一路真輝　森川由樹　榎木孝明

期間／９月１日（日）～10日（火）

会場／新国立劇場・小劇場

料金／A席：7,000円　B席：5,500円  25歳以下：4,000円（９月１日のみ全席：6,000円 25歳以下：3,000円）※全席指定・税込

【問】J-Stage Navi 03-5912-0840