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芸能人インタビュー
- 役者人生のずっとそばにあった時代劇。受け継いだ伝統を新時代、若い役者につなぎたい 2019.05.20
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誰もが親しみを覚える柔和な笑顔がトレードマークの中村梅雀さん。9歳で初舞台に上がり、以来、役者として着実にキャリアを重ねてきました。現在公開中の『居眠り磐音』では人気若手俳優らと共演。新時代の幕開けにふさわしい時代劇で抜群の存在感を発揮しています。
役者としての信条は素直なこと、間違っていたら謝ること
テレビやスクリーンを通り越し、伝わってくる人柄の良さと穏やかな空気。中村梅雀さんが醸し出す人情味は作品に親しみを与え、見る者の心を和ませてきました。そんな梅雀さんが役者として肝に銘じていることがあります。 「傲慢さや不遜さがあると、それは必ず演技に出てしまう。とくにスクリーンは役者の本性まで映し出してしまいますから。役者である以上、まず人として素直であること、そして間違っていたら謝ることを心がけています。最近ですか? 3歳になった娘に『パパがダメなの』って叱られ、すぐに頭を下げました(笑)」 小気味よくジョークを交えて話す梅雀さん。歌舞伎の初舞台に上がったのが9歳、甘えの許されない稽古場で幼少期を過ごしました。 「少しでも間違えるときつく叱られ、着物の着方や動作、言葉の使い方など、頭の上からつま先まで徹底的に叩きこまれました。でも、あの厳しい稽古があったから今の自分があります」 役者生活54年、つねにそばにあったのが時代劇でした。しかし、昭和から平成、令和と時代が移るにつれ、梅雀さんの〝主戦場〟が減っていきます。 「寂しいですね。とくにテレビで時代劇を見る機会が本当に少なくなりました。西部劇がなくなったアメリカのように日本から時代劇がなくなる──そんな不安を覚えることもあります。ただ、時代劇を演じられるベテラン役者はまだまだ健在!いつでもひと肌脱がせてもらいますよ」
『居眠り磐音』で世話好き、お節介の長屋の大家を好演
時代劇への思いを熱く語る梅雀さんは、6500万部以上を売り上げ、平成を代表する時代小説作家・佐伯泰英さん原作の『居眠り磐音』(5月17日から全国公開中)に出演。
主人公は好青年で剣の達人・坂崎磐音(松坂桃李)。江戸での勤めを終え、幼馴染の小林琴平(柄本佑)と河出慎之輔(杉野遥亮)と故郷に戻ったその夜。琴平の妹・奈緒(芳根京子)との祝言に磐音が備えていた頃、ある出来事が原因で琴平が慎之輔を殺めてしまう。藩に命じられた磐音は、義兄となるはずだった琴平を討ち取る。磐音は失意のなか、愛する奈緒を残して脱藩。しかし、移り住んだ江戸で新貨幣をめぐる騒動に巻き込まれ…。江戸の平穏を取り戻せるのか、磐音と奈緒を待つ衝撃的な運命とは。せつない人間ドラマだけでなく、圧倒的な映像美、鬼気迫る殺陣がスクリーンで展開されます。
梅雀さんは気風のいい長屋の大家・金兵衛を演じ、江戸で途方に暮れる主人公・磐音を手助け。世話好き、そしてお節介という梅雀さんの真骨頂が楽しめる役柄です。
「若手からベテランが出演し、幅広い年代の方が楽しんでいただける作品となりました。主演の松坂(桃李)くんも本当にいい芝居でした。飄々としながらも、胸の奥に悲しみを秘めた表情、演技をぜひ観てもらいたいですね。
磐音が介錯するかのように友を斬ったのは、この国に厳しい身分制度や慣行があったから。歴史を知ること、役者が身につける衣装や動作、言葉遣いに漂う日本らしさを感じることも時代劇の醍醐味です。受け継いできた時代劇を、新しい時代、そして若い世代に伝えていく責任が私にはあります」
時代劇の話になると表情を引き締め、3歳の愛娘の話となると一気に目を細め、表情豊かに話す梅雀さん。取材中ずっと、人を惹きつける人情味が溢れ出ているようでした。■プロフィール
役者/中村 梅雀
1955年東京都生まれ。屋号は成駒屋。65年に新橋演舞場「勧進帳」太刀持ち役で中村まなぶを名乗り初舞台を踏む。80年に劇団前進座に入り、二代目中村梅雀を襲名。07年の前進座退団後も舞台や映画、ドラマ、音楽と幅広い分野で活躍。
■インフォメーション
「居眠り磐音」
5月17日㈮より全国公開中■原作:佐伯泰英 『居眠り磐音 決定版』(文春文庫刊)
■監督:本木克英
■出演:松坂桃李、木村文乃、芳根京子、谷原章介、中村梅雀、柄本明 他