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フラメンコで表現する近松の究極の愛の世界。私はその中に人間の生き様を描きたい 2018.12.11
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作詞家として数多くのヒット曲を世に放つ阿木燿子さんがライフワークとする舞台『Ay(アイ)曽根崎心中』。近松門左衛門の傑作をフラメンコの踊りとリズムで表現しています。今回は、プロデューサーとして作品づくりに携わる阿木さんに意気込みをうかがいました。

 

フランメンコと曽根崎心中をつなぐ深く哀しい“心の叫び”

  「私と近松とフラメンコ、この出会いは運命だったと思うんです」
 数々のヒット曲を手掛ける作詞家・阿木燿子さん。時代に流されることなく挑むような言葉でアイドル像を一変させるなど、日本歌謡界への功績は計り知れません。そんな阿木さんが恋するように瞳を輝かせながら話すのが、フラメンコと近松門左衛門の傑作「曽根崎心中」を融合させた舞台『Ay曽根崎心中』。阿木さんはまずタイトルについて「Ay(アイ)とはスペイン語の感嘆詞で、特に深い哀しみとか、心の底から湧きあがる嘆きを表現する時に使う溜め息に近いもの」と話されます。
 「以前は「フラメンコ曽根崎心中」というタイトルだったんですが、それだと作品を言いきれないと思っていたところ、徳兵衛役の佐藤浩希さんからアイはどうですか? って提案されて。それだったら日本語の愛にも通じるし。スペイン語の深い哀しみの表現が日本語の愛と重なるなんて、偶然の一致にしても興味深いですよね。まさに愛の究極の形が心中になった、お初、徳兵衛の悲恋を言い表すにはぴったりだなと。
 フラメンコと曽根崎心中は、お互いに呼び合ったのだと思います。ヒターノたちの歌や踊りの中に息づいている、虐げられた放浪の民の、切ない人としての叫びと、生きて好きな人と添い遂げられないお初と徳兵衛の叫び。この二つが深い所でつながって、この作品が生まれた気がします。なので、心中とフラメンコの出会いは必然だったと思うんです」

言葉も国境も超えて感動を生む、ただひとりを愛し抜く情念

 阿木さんは曽根崎心中に描かれる純愛の完結こそが日本だけでなく世界の人々の胸を打つのだと言います。
 「現代は、本気で人を愛することや、濃密な人間関係が希薄な時代ですよね。たった一人の人を、命をかけて愛し抜くなんて、ドラマの中だけで、現実に有り得ないと思われているでしょう? だからこそ、ぜひ、若い人にも年齢を重ねたご夫婦にも観ていただきたいんです。この2時間半だけでも忘れかけているパッションを思い起こし、心を新たにしてときめいて頂けたらなと。決して軽くはないお話ですが、愛も情も紙切れのように薄い時代に、ここまで凝縮して生きるのも悪くないなぁって思っていただければプロデューサーとして本望ですね。
 この作品に長く携わっていますが、今では作品が意志をもって私たちを自由自在に動かしている気がするんです。私たちは“曽根崎様”って呼んでいますが、時に曽根崎様は人遣いが荒くて(笑)。その真意をつかみ切れないことが多いんですが、もしかしたら情感みたいなものは、国境を超えられるとお考えになっていらっしゃるのかも、なんて(笑)。まぁ、私も魂と魂はつながっていると思うし、言語も国境も越えて、感動を共有できると信じているんです。日本語で歌は入りますが、音楽的にも和太鼓や津軽三味線が入ったり、もちろんフラメンコギターが入ったりで、かなりワールドミュージィックぽくなっています。国境をこえてこの愛が伝わってゆくことを、心の底から願っているんです」
 フラメンコという表現をつかって近松の世界を構築し、その中に人間の生き様を描く『Ay曽根崎心中』。胸を貫かれる愛の叫び、情熱のフラメンコ、唄、踊り。総合芸術としての魅力とともに、今回は三浦祐太朗さんが、山口百恵さんの「さよならの向う側」のアンサーソングとして話題の『菩提樹』を歌うなど見所満載。人間の愛、生と死が混然となり眩暈を覚えるほど切なく美しい、圧倒的な舞台をぜひ劇場で。

 

■プロフィール

作詞家・作家/阿木燿子

横浜市出身。「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家デビュー。山口百恵他多くのアーティストに詞を提供。小説やエッセイなど幅広く活躍。「TANKA 短歌」では初の映画監督に挑戦。赤坂でさまざまなジャンルの音楽を楽しめるライブビストロ「ノヴェンバー・イレブンス1111」を経営。2006年紫綬褒章受章。2018年旭日小綬章受章。

 

■インフォメーション

Ay(アイ)曽根崎心中

■原作/近松門左衛門 

プロデュース・作詞/阿木燿子 

音楽監督・作曲/宇崎竜童 

出演・演出・振付/佐藤浩希 

出演/〈踊り〉鍵田真由美、工藤朋子(Wキャスト)、佐藤浩希、三四郎(Wキャスト)

〈唄〉三浦祐太朗、Ray Yamada、若旦那、 他 

日程/12月12日(水)~12月20日(木)

料金/SS席:13,000円、S席:10,000円、A席:7,000円、アンダー25:5,000円

※全席指定・税込 

会場/新国立劇場・中劇場

【問】キョードー東京☎0570-550-799

※未就学児入場不可

※アンダー25のチケットは入場の際、年齢が確認できる身分証明書が必要となります。


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