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けっして切れない「家族」のつながり。大切なのは一人の人間として尊重し合うこと 2018.10.15
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悲しみを乗り越え、再び向き合おうとする家族の姿を丁寧に優しく紡いだ映画『鈴木家の嘘』。辛い現実を笑いとばして生きる人々をユーモアとともに描いています。愛にあふれる鈴木家の母を熱演した原日出子さんに映画の見所やご家族についてお聞きしました。

 

どんな時もお腹はすく。悲劇に笑いがまざるリアリティ

 ある日、突然家族の誰かが自らこの世を去ったら…。  映画『鈴木家の嘘』は、いつもと変わらない朝、自室で自らの命を絶った息子を母親が発見するところから始まります。  「あの場面は、本番まで自分でもどうなるか想像できませんでした。実際、演じている最中は演技という感覚が突きぬけてしまっていましたね。長男・浩一役の加瀬亮さんが本当の息子のように思えてしまって、あの時の気持ちが甦って、今もまだ映画を冷静には観られません」  そう語るのは、鈴木家の母・悠子を演じた原日出子さん。この後、映画ではショックで浩一の死の記憶を失った悠子のため、鈴木家の家長・幸男(岸部一徳)と娘・富美(木竜麻生)が、一世一代の嘘をつくことで話が展開していきます。  〝ひきこもりだった浩一は、海外で事業をはじめた叔父の手伝いをするために、アルゼンチンに旅立った”  浩一がやっと立ち直れた、と感極まる悠子。悠子についた嘘を隠し通そうと、偽物の兄からの絵手紙を書く富美に、原宿でチェ・ゲバラのTシャツを探す幸男。切なくも笑いを誘う父と娘の奮闘が映画の見所のひとつです。  「岸部さんと麻生ちゃんがとにかく可笑しくて。テーマはシリアスでもくすくす笑えるところが本作の魅力でもありますが、現実もそういう部分があるのではないでしょうか。人は悲しんでばかりではいられません。どんなに辛くてもお腹はすく。とても悲しくて泣いていたのに、しばらくすると冷蔵庫を開けている自分がいたりね。映画でも法事の後は、帰りにうどん屋に寄り、家では店屋物を頼み、とりあえず食事をするんです。そこにとてもリアリティを感じました」

3人の子を持つ母として考える家族のつながり方 

 〝何故浩一は死んだのか?”  記憶を失った悠子を気づかい、幸男と富美は必死に日常を過ごそうとしますが、次第に抱える思いに押し潰されそうになります。もがきながら再び前を向こうとする鈴木家の人々。この家族のように辛い現実に直面した時、人はどう生きればよいのでしょう。  「彼らと同じ立場になったら、どんなに考えないようにしても、きっと無理ですよね。それなら感情を抑え込もうとしないで、とことん悲しんだ方がいいのではないでしょうか。落ちるところまで落ちたら、あとは浮かび上がるだけだから。寝て覚めれば新しい日はくる。私は楽天家なので、落ち込んで生きるのはもったいないな、と思います。そこまで、まだ重いものを背負っていないのかもしれませんが」  自分自身も3人のお子さんの母である原さん。問題が起きた時はみんなが原さんの元に集まるそうです。  「うちはみんな、何でも私に話します。お互いの不満も私を経由して伝え合う(笑)。子どもが思春期の時は、ぶつかって怒鳴り合うこともありました。今は逃げずに関わってくれて嬉しかったと言ってくれていますが。離れていても家族のつながりは切れません。厄介でもありますが、一人の人間として尊重し、分かり合おうとすることが大切ではないでしょうか。親でも間違えることはありますから、その時は率直に謝ります。広い世界を知るために家族の外にも目を向けてほしい。つながり方の正解は分かりませんが、本作が家族を考える良いきっかけになればいいですね」

 

■プロフィール

 

女優/原日出子

東京都出身。劇団四季研究生在籍時に『夕焼けのマイウェイ』(79年)で映画初出演。1981年、NHK連続テレビ小説「本日も晴天なり」の主演に抜擢され、脚光を浴びる。おもな出演作に、『Shall we ダンス?』(96年)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16年)、『怒り』(16年)、TBS「Nのために」(14年)、EX「越路吹雪物語」(18年)などがある。

 

■インフォメーション

 

鈴木家の嘘


11月16日(金)より
新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

■監督・脚本/野尻克己
■出演/岸部一徳  原日出子  木竜麻生  加瀬亮 
岸本加世子 大森南朋ほか


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