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芸能人インタビュー
- お茶を習う日々で感じた本当の自由、生きる喜び。伝えたい言葉にできない想いがある 2018.09.18
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人気エッセイスト、森下典子さんが茶道教室に通う20数年の日々を綴ったロングセラーエッセイ『日日是好日』が映画化! 出演するのは、黒木華さん、樹木希林さん、多部未華子さん。〝お茶”を通して、成長する女性の人生を描いた、味わい深い感動作が誕生しました。
画面の隅々までこだわりが光る
映画『日日是好日』!「本日はよろしくお願いします」と、気品ある着物姿で登場した森下典子さん。柔らかい物腰と穏やかな口調でまわりの雰囲気を和ませます。
森下さんは自身のさまざまな体験を女性らしい視点で描き、多くの人気作を持つエッセイストです。中でも茶道教室に通う20数年を綴った『日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、刊行から16年経つ今も愛されています。 「茶道教室に通って約40年経ちますが、こんなに長く続けるとは思ってもいませんでした。でもお茶を続けていなければ、ものを書く仕事もやめていたかも。お茶の稽古は日常を脱ぎ捨てられるので、悩んでいても終わる頃にはいつも気持ちがすっきりしているんです」
将来への不安、別れ、そして喜びや幸福。お茶の世界とともに女性の心情を瑞々しく描いた本作。その空気感をそのままに『日日是好日』が映画化されました。可愛らしい和菓子、趣向をこらした掛け軸、美しい茶道具の品々、季節の草花は見ているだけで穏やかな気分になり、特に主な舞台となるお茶室には特別な静謐さが漂います。 「お茶室は元からあった民家を増築して作りました。しかも、家に続く路地もその民家の庭を半分潰して新たに作るこだわりよう。撮影は11月の寒い時期だったんですが、春や夏の微妙な光の変化も再現していて。季節の巡りは物語の重要な要素なので丁寧に演出していただいて嬉しいです」 繊細に映し出されたお茶の作法やお点前も映画の見所のひとつです。しかし、主役の典子を演じる黒木華さん、お茶の師匠・武田先生役の樹木希林さんも茶道は初めて。現場では森下さんが直接、指導しました。 「特に樹木さんは先生役で大変だったと思いますが、複雑なお点前も数回の練習で覚えてしまうので、その集中力に驚きました。私の師匠の武田先生は、ハマっ子の切れの良さがあり、知的でまわりを包み込む温かさもある。樹木さんには先生と似た印象を受けました。映画の中の樹木さんは佇まいもお茶の先生そのもので、やっぱり凄い! と感動しましたね(笑)」
物語は典子が茶道教室に通い始めるところから始まります。 20歳になった典子は、ある日、母から〝タダモノじゃない”と噂の武田先生のお茶の教室をすすめられる。あまり気乗りしない典子だったが、従姉妹で同じ年の美智子(多部未華子)と一緒に通い始めることに。わからないことだらけのお茶の稽古に戸惑うふたり。やがて美智子は就職し教室をやめ、一方、典子は出版社でアルバイトをしながら、武田先生のお茶室に通い続ける。焦ったり、後悔するばかりの日々。それでも稽古を重ねるうち、典子の中で何かが少しずつ変化していく。 「世の中には〝すぐわかるもの”と〝すぐにはわからないもの”がある。お茶も〝何故こんなことを?”と思うことだらけですが、理解できなかった掛け軸も、面倒な作法も、繰り返すうちにふとわかる瞬間が訪れるんです。決まりごとだらけの狭い箱に入り込むことで、そこから豊かに広がる世界が見えてくるんですね。
静謐なお茶室で日常の煩わしさから解放され、季節の変化や自然を感じられた時、こみあげてきた言葉にできない〝今、生きている”という想い。あの時感じた本当の自由や生きる喜びをどうしても伝えたくて。この映画で皆さんもお茶室に入った気持ちになって、少しでも心に癒しを感じていただけたら嬉しく思います」
■プロフィール
エッセイスト/森下典子
1956年、神奈川県出身。1987年、週刊朝日のコラムを書くアルバイト経験をもとにしたエッセイ「典奴どすえ」でデビュー。その後、ルポライター、エッセイストとして活躍を続ける。また、茶道の稽古に40年通い続け2010年に「表千家教授」の資格を取る。著書に「前世への冒険―ルネッサンスの天才彫刻家を追って」「猫といっしょにいるだけで」「こいしいたべもの」など多数。
■インフォメーション
日日是好日
■10月13日㈯より、全国公開
配給:東京テアトル、ヨアケ
■監督・脚本/大森立嗣
■原作/森下典子
■出演/黒木華 樹木希林 多部未華子 鶴田真由
山下美月 鶴見辰吾©2018「日日是好日」製作委員会