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芸能人インタビュー
- いつか忘れてしまう些細な出来事の連続が、人生を成り立たせているんじゃないかな 2015.10.19
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個性的なキャラクターを演じ分け、一人芝居の第一人者として国内外で活躍するイッセー尾形さん。最近はテレビや映画での活躍も目覚ましく、9年ぶりの主演映画「先生と迷い猫」が公開中。地毛の白髪のまま役を務め、いぶし銀の演技が笑いと心地よい感動を誘います。
■ライフワークとする
一人芝居、新しいものが生まれる予感「最近、バストが8センチもアップしてね(笑)。体力づくりで始めたピラティスのおかげです。僕が体の左側のバランスが悪いと思っていると、先生が『右が頑張っていない。左が頑張り過ぎ』と言うんですよ。いやぁ、奥が深いですね。微妙なところは芝居に通じますね」
一人芝居のパイオニア的存在のイッセー尾形さん。ひとたび舞台に上がれば、観客の視線はイッセーさんただひとりに注がれます。真剣勝負を続けて40年余り。張りつめた緊張感のなか、数々の笑いを生んできました。還暦を境に休止し、現在は新作に向けて仕込みの最中です。 「花咲じいさんがサッと灰を出すように、こんなネタはどうですかとさりげなく提示したい。間が空いた分、これまでよりも新ネタという言葉に重みを感じています。だけど、今までにない一人芝居が生まれそうな予感もしているんですよ」 一人芝居で演じる市井の人々は「徹底的に自分自身から離す」ことで作り上げるそうですが、公開中の映画「先生と迷い猫」は正反対のスタンスで役作りに挑みました。
「役はクセがあったり、見た目から入るのが得意なんですけど……、監督が今回は控えましょうって。だから、演じるというよりも今の僕がいるような感覚。本当の自分に出会ったようでした。所々、好き勝手やったシーンもありますけど(笑)」 演じたのは妻に先立たれ、田舎町でひとり暮らす元校長の森衣。退職後も校長の振る舞いが抜けず、町では煙たがられる存在です。次第に世間から遠ざかり、家に寄りつくのは妻が生前可愛がっていた野良猫くらい。ある日、何度も追い払ってもやって来た猫が姿を消してしまいます。気になって町へ探しに出かけ、そこで住民とふれあい、心の奥底にあった亡き妻への想いに気がつきます。 大きな事件はなく、のどかな田舎町で暮らす人々と野良猫とのふれあいを描いた本作。主演のイッセーさんには、撮影前ひとつの疑問がありました。
「いなくなった猫を探す映画が本当に面白いだろうか。半信半疑で現場に行くと、共演の(岸本)加世子さんや染谷(将太)君たちやスタッフが温かく迎えてくれてね。みんなでスクラムを組んで撮影に臨むことができました。終わりが近づく頃には、もっと一緒にやりたいと寂しくなりました」 町の住民と協力して猫を探す森衣の心情と、不安のなか役を務め上げたイッセーさんの思い。このふたつが巧みに重なり、命のはかなさと人生の面白さを表現しています。
「ほのぼのしている町にも過酷な現実はあるし、心の奥には思い出したくないけど忘れてはいけない過去がある。そんな矛盾を描いた作品になりました。 映画では大事件ですが、猫探しなんていつか忘れてしまう出来事かもしれません。でも、そこには出会いがあり、深刻なことに向き合うことで、その人を変えていく。実は些細な出来事の連続が人生を成り立たせているんじゃないかな」 たくわえた白ひげに手をやり、人生を語る姿には哀愁がにじみ出るようです。 「ずっとひとりで舞台に立って、お客さんと正面で向き合ってきたから。長くやってると、お客さんの目の届かない背中には哀愁が出てくるんですよ。それに僕は猫背だから。背筋がしゃんと伸びているより、なんだか哀愁があるでしょ(笑)」
■プロフィール
俳優/イッセー尾形
1952年福岡県生まれ。日本テレビ「お笑いスター誕生!!」で金賞受賞。一人芝居でライブ活動をメインにテレビや映画で俳優活動を行う。主な映画出演作は「太陽」(2005年)、「60歳のラブレター」(2009年)など。マーティン・スコセッシ監督の「Silence(原題)」の公開待機作などがある。
■インフォメーション
「先生と迷い猫」全国公開中
●監督 深川栄洋
■出演 イッセー尾形/染谷将太、北乃きい、ピエール瀧、
嶋田久作、佐々木すみ江、カンニング竹山、久保田紗友/
もたいまさこ/岸本加世子
ドロップ(三毛猫)