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芸能人インタビュー
- 普通の家族の日常を温かく描いた映画。ときに切なく、そして胸躍る作品になりました 2014.05.19
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「お嫁さんにしたい女優」として親しまれ、朗らかな人柄や穏やかな語り口が印象的な市毛良枝さん。スクリーン越しでも人の温もりを伝えられる存在です。実生活では10年以上に渡って母の介護に取り組み仕事と両立。笑いと涙で綴る映画「六月燈の三姉妹」ではたくましい母親を演じています。
■ハートフルコメディでバツ2の和菓子店女主人を好演
77年放送のドラマ「小さくとも命の花は」から9作に渡って続いた嫁姑シリーズの出演以来、ホームドラマに欠かせない存在となった市毛さん。5月31日(土)公開の映画「六月燈の三姉妹」では、鹿児島で和菓子店を営む中薗家の母・惠子を演じました。バツ2の惠子、居候には別れた前の夫、出戻りの長女、離婚調停中の次女、婚約破棄して不倫中の三女…。〝ワケあり家族〟の屋台骨として娘たちを見守ります。 「惠子は大らかな性格の女性です。そして三者三様の娘がいて、前の旦那は居候、そこに離婚調停中の次女の夫が押しかけ、家族はすごい状態(笑)。母として娘にきついことも言うのですが、鹿児島弁だからどこか可愛らしくて楽しく演じられました」 長女と次女は最初に結婚した夫、三女が二回目に結婚した夫(居候)との間にできた子ども。姉妹は育った場所も異なるなど複雑な家族関係の母親役を演じ、ふと思い出したことがあります。 「『家族合わせ』っていう遊びがありましたよね。八百屋さんならその家族は前掛けをしていたりして、服や持ち物から家族を揃えていくものです。中学生の頃に気づいたのが、『あんな典型的な家族はいない』ということ。今より秩序を重んじる時代でしたが、実はいろいろな家族の形があり、それを世間は受け入れていたんじゃないかな」 物語は赤字に苦しむ店を再建するため新作和菓子を開発し、地元の夏祭り「六月燈」で売り出します。 「決して大きな事件が起きるわけではありません。ある普通の家族の何気ない出来事に目を向け、いじらしくも温かく描いています。ときに切なくなり、そして胸が躍るような作品になったと思います」
■直面する親の介護 最悪の事態になる前に他人の手を借りる
一般的な家庭の日常を描いた本作。市毛さんが生活の中で「同年代の皆さんの多くが直面しているのでは」と話すのが介護です。同居している98歳のお母様を、10年以上に渡って介護しています。 「介護は思い通りにいかないことの連続です。たとえば、忙しい時に『ごはんは食べたくない』って言い出したり。苛立って『食べないと死んじゃうじゃない』と返せば、『だったら死んだ方がいい』。密室で二人、そして家族だからこそ救いのない言葉を口にしてしまう…。最悪の事態にもなりかねません」 介護漬けの生活が続き、5年余りが経ったある日。疲弊した市毛さんは看護師に「お母さんも心配ですが、市毛さんご本人のことがもっと心配です」と言われたのを機に生活を省みます。 「それからは母を置いてでも自分のメンテナンスを心がけました。ただ、掴んでいた母の手を放せば倒れてしまいます。そこで他人の手を借りることにしました。今は多くの方の支えで何とかなっている状況です。また、私は仕事をしていましたが、仕事や趣味がなくて社会と接点のない人は逃げ場がありません。介護はひとりではできないもの。他人に頼ることは情けないことではありません」 女優として、ひとりの人間として責務を全うする覚悟。穏やかに語られる言葉の中に、市毛さんの真摯な生き方が垣間見えました。
■プロフィール
俳優/市毛良枝
いちげ・よしえ 1950年静岡県生まれ。71年にドラマ「冬の華」でデビュー。以来、映画やドラマなどで活躍している。40歳で登山を始め、現在は特定非営利活動法人 日本トレッキング協会理事、環境カウンセラーを務める。
■インフォメーション
「六月燈の三姉妹」
5月31日(土)
TOHOシネマズ日本橋、シネマート六本木ほか全国ロードショー■監督/佐々部清
■出演 / 吹石 一恵、徳永えり、吉田羊、津田 寛治、西田聖志郎、渋江譲二、重田千穂子、井上順、市毛良枝他