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芸能人インタビュー
- 期待も不安も抱えていけばいい。楽しいだけの人生なんて物足りないもの 2013.01.21
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トレンディ女優として時代を築いた浅野温子さん。42歳から全国の神社を巡り、古事記の「よみ語り」を実施。迫真の演技で多くの観衆を魅了し、日本伝統を伝える活動は高く評価されます。今年3月、再演を熱望した舞台『公の園』が決定。女性三人が繰り広げるコメディに期待が高まります。
■初舞台での苦い経験をバネに挑んだ古事記の「よみ語り」とびきりのいい女を演じたかと思えば、茶目っ気たっぷりに愛くるしい笑顔を見せる浅野温子さん。テレビの中で女性の強さと弱さ、愛くるしさと逞しさを見事に演じ、多くの女性が憧れました。トレンディ女優として時代を築いた浅野さんも51歳。現在は古事記のよみ語りで神社を巡り、國學院大学で教壇に立つなど、多方面で活躍。輝き続ける浅野さんのターニングポイントは舞台でした。
「37歳で初舞台に臨んだのですが、20数年テレビや映画を続けていたので自信があったんですよ。でも舞台に上がったら全くダメ。私は今まで何をやってたの、時間を返してって思いました」ドラマより多い台詞、やり直しのきかない一発勝負の本番。舞台で演技することが「別世界」のように感じました。初舞台での失敗は今も忘れません。
「台詞がとんでしまって…。話しでは聞いてましたが、本当に頭が真っ白になるの。西岡徳馬さんに助けてもらったけど。性懲りもなく、また台詞がとんで。今度は西岡さんに『私なんだっけ』って言って、台詞を教えてもらいました(笑)。なんとか2ヶ月過ごしましたけど、後から思い出そうとしても本番もお稽古も記憶にないの。抜け殻のように真っ白でした。歳を取ってから怖い思いをすると、子どもの頃の2倍、3倍のショックですよね。映像ではできるのに舞台ではできない。それが悔しくて仕方なかった」
何もできない自分を克服するため始めたのが古事記の「よみ語り」。共演者や演出家もなく、舞台へ一人で上がり、観客を浅野流神話の世界に誘います。11年で94ケ所で公演を重ね、女優として幅を広げただけでなく、表現者としての顔が垣間見えます。
「素晴らしい話しが日常から失われつつあります。もったいないと思いました。何とか残せないかと考え、脚色を加え、より分かりやすい物語にしています。胸に響き、笑っていただければうれしいですね」3月に控える舞台『公の園』にも強い思いを秘めています。再演となる今回の舞台は、浅野さんをはじめ出演者らの熱望によって開催が決定しました。
「共演した長野里美さん、演出家の野崎美子さん、私がどうしてもやりたくて。だからスタッフを説得し、関係者を巻き込んだりして再演が決まりました。女のエゴってすごいでしょ」
公園のベンチで聖書を片手に冥想にふけるマリア(浅野温子)。やってきた超現実主義の主婦・喜美子(長野里美)の態度にマリアは憤慨。そこに現れるインテリにも関わらず世を捨てたような詩音(川崎亜沙美)が3人の関係をかき乱します。交錯する女のプライドと見栄、やがて互いの過去を知ると共感が生まれ、物語は意外な方向へ…。女性3人が体当たりで挑む痛快コメディが幕を開けます。
「本当にダメな女3人を描いた作品です。私たちと同世代の女性が笑って泣けて、心から楽しんでいただける舞台にしたいですね。お願いだから、皆さんも私たちのエゴに付き合ってください(笑)」女優、表現者として着実に成長する浅野さん。年齢ときちんと向き合い、一歩ずつ自分の道を歩んできました。
「体でカバーできた若い頃とは違い、今は体と気持ちが一緒でないと進めません。今年は52歳。体調や気持ちはどうなっているかしら。初体験だから期待もいっぱいだけど…、やっぱり怖いでしょ。でも、それでいいと思います。だって人生って楽しいだけじゃ物足りないもの」
■プロフィール
女優/浅野温子
あさの・あつこ 1961年東京都出身。77年ドラマ「文子とはつ」で女優デビュー。数多くのテレビや映画で活躍し、03年から古事記の「よみ語り」で全国の神社を巡る。現在、ル テアトル銀座で「阿修羅のごとく」(原作:向田邦子、出演:荻野目慶子・加賀まりこほか、1月29日まで公開)に出演中。3月に「公の園」の公演を控える。