アクティブなシニアライフを応援する情報サイト
芸能人インタビュー
- 人生は困難の連続だからこそ楽しい。良い表現はそこから生まれるのだと信じています 2012.04.16
-
人生は困難の連続だからこそ楽しい。
良い表現はそこから生まれるのだと信じています
吉田栄作さんが演じる人物は、揺るぎない信念を持つことが多い。
それはまさに吉田さん自身の、俳優として敢えて困難な道を選んできた生き方がそうさせるのだろう。
今回、再演が決まった舞台版『ローマの休日』で、どんな吉田さんに出会えるか、期待は高まる。
■遠回り上等! イバラの道の方が「生」の実感がある!!
「自分の根っこはデビューから20年以上経っても変わらない」と話す吉田栄作さん。強さと優しさをたたえた真直ぐな目が印象的だ。デビュー当時から演技には定評があった。しかし日本での高い人気の中で吉田さんは突如渡米、武者修業の旅に出た。そこで改めて自分の役者としての根を感じたと言う。
「芝居という世界では、アメリカも日本も素晴らしい点もあれば課題もある。完璧なものはないと思いました。それでも自分のナショナリティって間違いなく日本だと意識できたと思います。自分の母国で俳優として何ができるのかを探していくことが、日本の俳優である僕の使命なのかもって思えたんです。
この経験が、役者として遠回りかどうかは分かりません。僕は遠回り上等! で生きていますから。レールが敷かれていたり、足跡や轍がある道よりは、何もない所に自分で足を踏み入れる、イバラの中をかき分けて進む方が生きてる実感があるじゃないですか! かっこつけるわけではありませんが、この世界に僕はそういう「生」の実感を求めていたのだと思います」
俳優を目指した時から吉田さんの望むものは、平たんな道にはなかった。それは生きている実感を求め続けるための挑戦でもある。アメリカから帰国した後、ほとんどゼロのような状況で吉田さんは俳優として歩き始めた。でもそこに後悔などないと、笑った。
「若い頃の自分は、弱かったから強くみせたかっただけ。そういうイメージを作って、それが多くの人に受け入れられたのは有難いことです。ただ、それをずっと引きずっていては前に進めません。自分で作ったものなのだから、それを壊し、作り替えるのも自分しかいないんです。そしてそれは困難だから楽しい。そういう所から良い表現って生まれるのだと信じています」■俳優としての力を試すつもりで始まった舞台への取り組み
俳優としての覚悟と信念。変わることのない情熱。「生」の瞬間を求める彼が、舞台という空間に導かれたのは当然なのかもしれない。
大切にしてきた音楽ライブ。それもまた「生」。映像のイメージが強い吉田さんだが、舞台での存在感は圧倒的。何気ない動きの一つひとつが、観客を物語の世界へと引き込んでいく。舞台という世界でも、これほど一瞬で、物語の世界観を伝えられる俳優は少ないだろう。
「舞台に初めてあがった時のことはよく覚えています。劇作家の永井愛さんがわざわざ足を運んでくださって「この役はあなたにやって欲しい」とおっしゃられたんです。映像出身で、舞台には縁がないと思っていましたが、俳優として今どれだけのことができるのか、自分へのチャレンジのつもりで引き受けたんです。それを周りの友人たちに話すと、「行くよ!」って皆来てくれたんです。そういうのって今まで味わったことのない嬉しさで。今は年に一本のペースで舞台に取り組んでいます。音楽でのライブに、舞台が加わって、表現者としての自分の中のバランスが良くなったように感じていますね」
そんな吉田さんが世界的な名作『ローマの休日』の舞台版に出演する。2010年に初演された舞台の再演だが、初演時にはちょっと躊躇ったそう。
「映画版のスケールやイメージの強さを考えると、ジョーやアンを演じるのは誰にもできないのではと思いました。それでも、演出のマキノさんのアイデアや情熱、作品の持つメッセージ性などを考えるうち、これはやるべきだと。それに僕がここまで俳優としてやって来た証しにもなるように思えて。それを多くの人に見てもらいたかったし、僕の中にも刻みたかったんです」■舞台版『ローマの休日』だから
描ける人物たちの緊密な人間模様
『ローマの休日』といえば、世界的に愛される、王女と新聞記者の出会いと別れを描いた不朽の名作。それを舞台ではわずか3人の役者が演じる。舞台版の魅力について吉田さんは
「やはり映画では描かれなかった部分が舞台版にはありますから、それは魅力だと思います。例えばジョー・ブラッドレーの素性とかですね。原作者のダルトン・トランボは赤狩りから友人を守って収監されたそうなんですが、そういった男気がジョーの性格に生きています。人物の輪郭をさらにはっきりさせたことで物語がいっそう魅力的になったんです。だからこそ、王女も心引かれた。そういう説得力というのは、マキノノゾミさんの演出のすごいところです」
実は初演の千秋楽で演出のマキノさんから再演の話しが出たと言う。しかし、精神的にも体力的にもぎりぎりまで出し切った直後のこと、その場では吉田さんは答えに困ってしまった。するとマキノさんは「じゃあ、舞台のセットはもう捨ててしまおう」と、思いも寄らない言葉を口にした。最大級の讃辞だった。この作品は吉田栄作以外ではできないのだと。思わず「やる…かも」と言ったことで、舞台版『ローマの休日』は再び動き出す。新たに荘田由紀さん、秋元才加さんという強力なwキャストによる王女を迎えて、さらにパワーアップして帰ってきた。
「僕たちが再演で、彼女たちが初演というのは、前回よりも多少僕たちに余裕があるじゃないですか。小倉(久寛)さんに余裕があるかどうか分かりませんけどね(笑)。彼女たちを引っ張っていくことで、まさに映画で達者な俳優の中に、オードリー・ヘップバーンがポンと入ってきたような、そんな感じのリアリティが出せるのかなって期待しているんです。もちろん僕も、この2年間で進化した自分を出すつもりです。そこから自然に出る動きを信じたいですね。それがジョーを演じる上での深みになると思っています。
再演となる今回も素晴らしいローマの休日をご覧いただけると思います。映画でオードリーの髪型をまねした世代、その子ども世代、そしてその次の世代まで。ぜひ三世代で観ていただきたいです」
少人数による表現は、登場人物たちそれぞれのつながりをいっそう引き立たせてくれる。目の前に広がるローマの休日を、ぜひ彼らとともに過して欲しい。この春おすすめの舞台がついに幕をあける。
よしだ・えいさく 1969年神奈川県生まれ。東映映画『ガラスの中の少女』でスクリーンデビュー。以降、テレビや音楽活動など幅広く活躍。2006年には『やわらかい服を着て』(作・演出/永井愛)で初舞台。その後も、重厚な演技のできる俳優として数々の話題舞台の主演を務める。◎公演インフォメーション
第36回菊田一夫演劇賞受賞作
舞台「ローマの休日」
2012年5月23(水)~5月27日(日)3人の俳優で演じられる舞台版「ローマの休日」
アン王女Wキャストでおくる待望の再演!!■原作/ダルトン・トランボ
■演出/マキノノゾミ
■脚本/鈴木哲也・マキノノゾミ
■出演/吉田栄作、荘田由紀・秋元才加(ダブルキャスト)、小倉久寛、川下大洋(声の出演)
■料金/9,000円(全席指定・税込)
■会場/天王洲 銀河劇場(品川区)
【問】銀河劇場チケットセンター 03-5769-0011