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芸能人インタビュー
- 波乃久里子/キャンパスはいつも真っ白。いつまでも燃え続ける、希望に満ちた役者であるために 2010.10.28
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劇団新派を支えながら、幅広く活躍する役者・波乃久里子さん。真摯に役と向き合い、さらなる高みを目指して芸を磨き続けています。そんな波乃さんに、役者道を貫く思い、そしてこの11月に開幕する舞台『取り立てやお春』への意気込みをうかがいました。
『芸は人なり』役者に必要なのは 人間を磨くこと
「待たせてご免なさいね。旅回りって大変なの。なにせ一座も高齢の方が多くなって(笑)。いつもはもっとキレイになれるんだけどね(笑)」
公演後に取材に駆けつけてくださった波乃久里子さんは開口一番そう言って微笑んだ。
16歳で新派の門を叩き、以来50年、役者としてつねに第一線で活躍する生っ粋の役者・波乃久里子さん。そんな輝かしいキャリアも波乃さんにとっては小さな事。『私の役者人生はこれからだと思っているので、過去の実績にはこだわりません。昨日のことも忘れるくらい』と笑い飛ばす。なんとも潔いかっこ良さが波乃さんにはある。それでも新派に入った当時のことを『とにかく必死でした』と言う。
「劇団には私を含めて役者がズラリ。待っていたら私の番なんていつやって来るか分からないんです。ですからちょっと風邪気味の方がいると『私が代役やりますから休んでください』って(笑)。今思えば失礼な話ですが、それくらい、誰もが舞台に立つために必死でした。稽古場では自分以外のセリフも動きもすべて覚えましたから」
そのお陰(?)なのか、波乃さんは花柳章太郎さんから
〈本役より 代役うまし 久里の花〉
というお褒め(?)の言葉をいただくまでになったのだそう。
「ただし代役は、単にセリフや段取りを覚えればいいのではなく、相手のことを第一に考えなければいけないんです。先日も新派公演で、急きょ代役を務めた松村(雄基)さんは、セリフはもちろん、その方の間やクセまでも覚えて演じてくださいました。間が変わってしまうと共演者が芝居しにくいだろうという配慮なんです。何よりも相手のことを考える。芸は人なりと言いますが、まさにその通りで、人間を磨くことが役者には大切なんだとつくづく思います。私なんてまだまだ」
新派で初代水谷八重子さんに師事した波乃さんには、忘れられない言葉がある。それは今でも波乃さんの役者人生を貫く一本の芯になっている。
技術だけではないお客様の心に届くハートのある芝居
「八重子先生からは『ベテランと言われたら恥と思いなさい』と教えられました。いつでもキャンパスは真っ白なのよって。ただ年数を重ねてきただけと思われるのは本当に恐いことです。50年も役者を続けていると、ある程度
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勅乃錣呂任④討靴泙Δ鵑任后・任發Δ泙気世韻任蓮・茲靴討・厖佑凌瓦脇阿④泙擦鵝・發舛蹐鷏譴涙窃ような稽古と、それに支えられた技術は鼻ψです Ρれど ・術よりも先にハートぁκいと、手も足も目も、石のように動ぁκぁκるんです ラ
今回私は明治座で『取り立てや お春』に出演します。遊廓の女将という役ですが、彼女の人生の紆余曲折、愛や人間味までも表現したいんです」そうすることで、指先や目の動き一つまでも女将になるのだと言う。
「形だけなら今すぐにでもできるんです。長火鉢の横で煙管を持って『どうしたんだい』なんてやれば、それらしく見えますから。
でも、それではお客様の心には届かない。上手いな、で終わってしまいます。私は、どこかで観たことのあるような芝居だけはしたくないんです」
そのために自身をつねに真っ白にし、精神的にはアマチュアであった方が良い。そんな役者でいる限り可能性が消えることはない。波乃さんの芝居への探究に終わりなどない。
「お客様からはまたこの役者を観たいと思われたいですし、共演者や演出家からもまた一緒に仕事をしたいと思われるような、そんな
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『取り立てや お春』で役者としての新たな希望を見つけたい
キャンパスは白。
波乃さんのこの思いは、11月に幕を開ける舞台『取り立てや お春』でも変わることはない。
物語は元禄、金が物を言う浮き世の世界。遊廓・扇屋で派手に遊ぶ弥七は、勘定が払えず居座り続けている。困った女将のお龍は、三味線を教えながら細々と暮らすお春を呼び寄せる。実はこのお春、泣く子も黙る凄腕の取り立て屋という裏の顔を持っていた。お春の無茶な取り立てに四苦八苦の弥七だったが、上方からやって来た侍親子の登場で事態は思わぬ方向へ。
落語、講談から歌舞伎まで、お馴染みの話がちりばめられた賑やかで痛快な時代劇。波乃さんも数々の傑作舞台で出演した明治座で、しかも演出のマキノノゾミさんとは初めての仕事。否が応にも気持ちは高まっていく。
「マキノさんや共演の方々と作り上げた、ありきたりではない芝居です。とにかく痛快な喜劇です。波乃久里子がどんな女将になっているかも楽しみにしてください。皆様がびっくりするような芝居になるのではと、私自身がドキドキしています。こういう刺激はいくつになっても嬉しいものですね。今はどんな事にも挑戦したい気持ちでいっぱいです」
共演は存在感のある黒木瞳さんや、錦織一清さん、石黒賢さんといった素晴らしい役者が揃う。波乃さんはこの舞台で、役者として新しい
担・セ
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「それに明治座は私にとって思い出深い小屋。歴史ある小屋って歴代の名優の魂のようなものがあるんです。こういう場所では、役者は本気で演じると助けてもらえるんです。役者の熱に応えるように小屋自体が熱気を帯びて、その熱気がお客様にも伝わる。すると小屋全体が不思議なほど盛り上がるんです。
『取り立てや お春』でも私たちは小屋に力を貸してもらいながら、皆さんと最高の時間を過ごせたらと思います。楽しんでいただくのは当然ですが、私はお客様にこのお芝居を通して舞台の素晴らしさ、面白さを伝えたいと思っています。それには先ず役者のレベルをさらに高くしなくてはいけませんが、ただただ楽しいという芝居ではなく、何日も何日も忘れないくらいに強く心に残るようにしたいんです。そういう思いまでも受け取っていただければ嬉しいです。『取り立てや お春』は、それくらい元気になれるお芝居です。観終わった後には10歳は気持ちが若くなっていると思いますので、ぜひ劇場にお越しください」
明治座11月公演『取り立てや お春』
■作・演出:マキノノゾミ ■出演:黒木 瞳、
石黒 賢、中村隼人、
波乃久里子、渋谷天外、
錦織一清 他
■公演期間:2010年11月1日(月)〜26日(金)
■料金:A席[1・2階]
12,000円、B席[3階]5,000円(全席指定・税込)
【問】明治座チケットセンター
03-3666-6666(10:00〜17:00)
役者/波乃久里子
なみの・くりこ 父は十七世中村勘三郎、弟は現中村勘三郎。1961年劇団新派入団。以後、『遊女夕霧』『皇女和の宮』などの新派の古典から『エレクトラ』など現代劇までさまざまな舞台で活躍。『女の一生』『おんなの家』で2009年読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。