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芸能人インタビュー
- 原 日出子/命が軽く扱われがちな現代。運命と向き合った少女から、命の大切さを感じてほしい。 2010.04.28
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穏やかな表情と優しい声、女性の温もりを自然体で表現できる女優・原日出子さん。最近はテレビやCMなどで母親役を演じ、幅広い世代から支持されています。命の大切さを描いた期待の新作映画「育子からの手紙」の見所や家庭円満の秘訣をお聞きしました。
母、妻、女優の三役をこなしてきた秘訣は「気持ちの切り替え」
79年にデビューして以来、素敵に年齢を重ねる原日出子さん。結婚や出産を経て、現在ではホームドラマに欠かせない女優として活躍。演技で見せる柔和な表情、温かな眼差しは母性に満ちあふれています。
「女優の仕事をしていても、子どもを産み、きちんと育てたいと思っていました。主婦としても家庭を大切にしたかった。ただ、今まで上手く両立しようなんて考えたことは全くありません。ただ必死にこなしてきただけです。現場に家庭を持ち込めませんし、家庭に仕事を持ち込めません。気持ちの切り替えは怠らないよう心がけていました」
おしどり夫婦としても有名な原さん。俳優の渡辺裕之さんと結婚して16年が経ちますが、夫婦喧嘩が『勃発』したことはいまだにないそうです。ご夫婦共に温厚な性格ということもありますが、3人のお子さんが一役買っているようです。
「笑いの絶えない家庭なんですよ。笑うことは健康に良いと聞き、『我が家は病気にならないね』と言って、また皆で笑うんですよ(笑)。たまには機嫌が悪く、会話が少なくなることもあります。でも、子どもがそれに気づくと『何かあったの?』って声をかけてくれるんです。それで『いけない、いけない』って反省して態度を改めます。子どもに助けられている部分もありますね」
現在、長女は成人されましたが、次女は高校生、末っ子の長男は中学生。思春期真っ只中のお子さんとは、どのように接しているのでしょうか。
「次女や息子とは今も一緒にお風呂に入っています。湯舟に浸かりながら、学校であったことなどを聞いています。裸のコミュニケーションが習慣になっています(笑)」
また、週末には近所の知り合いが集まり、「家族ぐるみのおつき合いも楽しみ」というから驚きです。人と人とのつながりを大切にした下町のような暮らしが家庭円満の秘訣なのかもしれません。
気持ちを前向きし、夫に支えられて乗り越えた更年期
健康的な笑顔が印象的な原さんですが、実は45歳から3年に渡って更年期障害に悩まされました。現在は元気そのものですが、意識を前向きに変えたことで少しずつ改善したと振り返ります。
「ひとりで悩んでいたある日、鏡に映る自分の顔を見て、『こんな顔をしていては好きな仕事もできない。乗り越えないと自分がダメになってしまう』と思いました。それからは気持ちを前向きにし、予定がない日もきちんと化粧をし、お洒落をして散歩をしたり、お買い物に行ったりするよう心がけました。主人に症状を話すと『僕は何をしたらいい』って優しくしてくれ、『今の私を受け入れてほしい』と伝えました。それから洗い物やゴミ出しなど、私を陰で支えてくれました。最初は何もかもひとりでやらなければいけないと考えてしまい、自分を窮屈にしていました。まず、身近な人に打ち明け、理解してもらうことが改善の第一歩だと思います」
『育子からの手紙』で少女と励まし合い、病と闘う女性を好演
デビューして間もなくNHKの朝の連続テレビ小説などに抜擢され、清純派として脚光を集めた原さん。キャリアを重ね、今や日本を代表する母親役のひとりへと成長しました。女優業を通し、人生で大切な多くのことを学んできたと話します。
「女優の素敵なところは、良いことも悪いことも役柄を通して追体験ができること。役を積み重ねていくたび、人生の宝物が増えていくようです」
現在、ひとりの少女・増岡育子の闘病と成長を通し、命の尊さを描いた『育子からの手紙』(4月17日から公開中、文部科学省特別選定作品)に出演し、育子と共に病気へ立ち向かう喜美子役を演じています。
「『育子からの手紙』は今から23年前に実際にあった出来事を題材にした映画です。映画が完成してから、原作者の副島喜美子さんご本人にお会いしたのですが、他人のように思えなくて。言葉が次から次へと溢れだし、次第に涙がこぼれてしまって。副島さんが育子ちゃんの髪の毛を入れたお守りを今も大切にされているのを見て、ふたりの関係は今も続いているんだって思いました」
物語は喜美子が30年以上前に患った足の病気が再発し、入院を強いられたことから始まります。入院先の病室で出会ったのが親子ほど年の離れた育子。足に痛みを抱えたふたりには、いつしか病と闘う『戦友』のような絆が芽生え、病室が移った後も手紙で互いを励まし合います。手術が成功して退院し、リハビリに励む喜美子。しかし、育子は骨肉腫でがんの転移が判明し、片足切断を余儀なくされます。
「育子ちゃんは私の子どもと同年代だったこともあり、病状が悪化するたび、胸が詰まるような思いが込み上げてきました。育子ちゃんの母親役だった有森也実さんは役柄上、泣かないようにと監督から言われていましたが、本当に言葉にならないようなシーンばかりでした」
原さんが最も印象に残ったと話すのが、育子が喜美子の息子である剛にほのかな恋心を抱き、病室で母に口紅をねだるシーン。叶わないであろう初恋と、わずか18歳で他界された自身の姉が重なると目を潤ませます。
「私が女優の道に進むことをすすめてくれたのが姉でした。原日出子は芸名なのですが、原は異父だった姉の名字からとったものです。姉が亡くなったとき、私は小学生だったので現実を理解できませんでした。自分が18歳になったとき、人生でこれほど楽しい時期に死んでしまう辛さを痛感しました。最後に母がお棺の中でつけてあげた口紅が本当に綺麗だったことは今もしっかり覚えています。映画の口紅のシーンを見ると姉のことが重なってしまい…。
育子ちゃんはどんなに辛くても耐え、生きることへの希望を決して諦めませんでした。現代は命が軽く扱われてしまうことがあります。運命と真正面から向き合った少女の勇気から、生きることの大切さを感じとっていただきたいですね」
『育子からの手紙』
突然、病気の再発で入院した喜美子。同室の激痛に苦しむ育子と付き添う母の姿に幼い頃の自分が重なる。やがて退院後も、育子と喜美子は手紙で支え合うようになるが…。
■出演:宮ざき香蓮、原日出子、有森也実、天宮良、颯太、渡瀬恒彦(特別出演)、佐藤B作
■監督:村橋明郎 ■原作:副島喜美子
■配給:「育子からの手紙」製作委員会
■角川シネマ新宿2にて上映中 全国順次公開
http://www.film-crescent.com/ikukoプロフィール
はら・ひでこ 1959年東京生まれ。劇団四季研究生在籍時に「夕焼けのマイウェイ」(79年)で映画デビュー。NHK朝の連続テレビ小説「本日も晴天なり」に主演。ホームドラマから社会派ドラマまで多くの役柄を演じ、映画やテレビなど、多方面で活躍している。