アクティブなシニアライフを応援する情報サイト
芸能人インタビュー
- 高樹沙耶さんインタビュー 地球と共に、美しく生きる 2008.05.22
-
大地とともに生きるアボリジニ、海の中を自由に泳ぐイルカたち。
この二つに共通するのが「地球と共に美しく生きる」ということです。彼らに触れ、心動かされた高樹沙耶さん。本当の豊かさに悩んだ末のこの出会いから高樹さんの生き方が変わり、いつしかたくさんの人々を巻き込み、大きなエコとなって動き始めています。アボリジニとの出会いで知った地球に生きる正しいマナー
「自分の着る衣類もゆくゆくは原料から自分で作ろうと思って、綿の栽培を考えているところなんです」テレビや映画でお馴染みの高樹沙耶さん。女優として活躍する一方、地球に優しい暮らしを実践するため、千葉県に『エゴコロハウス』という環境に優しい家を建て、自給自足の生活の実現に邁進しています。それにしてもなぜ、高樹さんはエコに取り組むようになったのでしょうか?
「私は20代前半でバブルを体験したのですが、その頃から『物の豊かさだけが人間の幸せではない』と感じ始めていたんです。ですが、ではどうしたらいいかという問いに、答えは見つからないままでした。その頃にオーストラリア先住民のアボリジニに出会って、彼らの地球と共存する生き方に直接触れて『地球に生きる正しいマナー』というものを強く意識させられました。この体験によって、自分のこれまでの生き方って、ちょっと間違っていたんじゃないかと思い、自然と共存する美しい生き方ってどういうことだろうって模索し始めたんです。それが30代に入ってからです」
そこから高樹さんの、地球と共に生きる「美しい」生き方が始まります。その中でイルカと触れあう機会に恵まれ、その思いはますます強くなったそうです。
「私はイルカたちの海での姿を見てたいへん感動しましたが、いくらイルカが好きでも海で暮らすわけにはいきません。それで、人間が陸でイルカのように美しく生きる方法って何だろうって考えたんです。今の日本で突然アボリジニのような暮らしも難しいですし……。そして行き着いたのが『パーマカルチャー』 なんです。実際にオーストラリアでパーマカルチャーを実践するマレーニという村に行き、どんな暮らしなのかを見せていただいたんです。そこで『21世紀は人類が地球を消費してきた生き方をみつめ直し、個人個人が何ができるかを真剣に考えないと』と感じ、日本で私はこのパーマカルチャーに基づいた生き方をしようと決めたんです。これからのステキな人って、自分が買うものの流れを知り、その行為が世界にどう影響するかを理解できる人じゃないかなって思います」
自分に気持ちの良い生き方を形にした『エゴコロハウス』
日本ではまだ「パーマカルチャー」という言葉は馴染みが薄いかもしれませんが、昨年アル・ゴア氏の『不都合な真実』が映画として公開されたり、環境問題が叫ばれるようになって、ようやく知られるようになってきています。簡単にいうと『持続可能な生活をしよう』ということなのですが、日本でのパーマカルチャーとは一体どのような暮らしなのでしょうか?「やみくもに今のテクノロジーを否定するのではなく、化石燃料をやめて太陽エネルギーを使えるようにしたりして、ただ昔に戻るのではなくて人間の築いたものを上手く利用しながら自然に返していく生き方ですよね。そのためにはまず私たちは学ばなければいけない。現在、地球の現状について学ぼうとすればいくらでも情報は手に入ります。その現状を踏まえてどうするかという動きがようやく始まったのだと思います。ちょっと残念なのは、今「エコ」が、トレンド的に扱われていることです。それも長い目でみれば大切かもしれませんが、化石燃料の代わりにバイオ燃料にすることで、地球上に新たな問題が発生するといったことも知って欲しいと思います。
私が千葉に建てた『エゴコロハウス』も、本当にエコを考えれば、家を建てるために、コンクリートをうつことも既にエゴだと思います。それで、キレイごと言っても自分の快適さを選んでしまった家なんだ。本当にごめんなさいっていう意味で「エゴコロハウス」と名付けたんです。ただ、せめてプラスマイナスゼロ、もしくは少しでも環境にプラスに転じるような生き方ができればと思っています。一つ失敗したのはテクノロジーに頼りすぎると、メンテナンスが大変なこと。例えば太陽や風からエネルギーを作る機器も、下水の浄化装置も壊れた時に自分では修理できない。それで昔の五衛門風呂や汲み取り式トイレは非常に正しかったと気づいたんです。エゴコロハウスでも、電気がなくなれば動かなくなる部分があると分かりました。それでは機能的に100%ではありません。もう少し昔の人の知恵を借りておけばと反省しつつ、今、庭に五衛門風呂とコンポストトイレ を作成中なんです。
ただ、私にとってこうした生き方、田舎に住んで衣食住ぜんぶの自給を目指すやり方って、とっても気持ち良いんです。特に農作業に取り組み生命を育んでいると、ものすごく希望が生まれます。そうすると私がいなくなっても、この先の未来も地球はヘルシーに動いていくんだって思えるんです。そう考えると不安がなくなるし、とても豊かで幸せな気持ちになれるんです」
自然の中にいる時がとても豊かで楽しい。だから今、幸せの中で生きていると、自信をもって言えます。
↑千葉に集成材を使って建てた「エゴコロハウス」。省エネ設計や自給自足などこだわりが随所にみられます。
【編集部注】 ※1:簡単に言うと伝統的な農業の知恵と近代技術を融合させ、持続可能な生活を作りだすこと ※2:バイオ技術を使っておしっこやうんちを分解し堆肥などとして使えるようにするトイレ
<プロフィール>
1983年「沙耶のいる透視図」 で女優デビュー。以来、テレビドラマ、映画、舞台で活躍する他、趣味の写真では'99年東京写真月間「女性だけの写真展'99 」入選、フリーダイビングでも2002の世界大会で日本女子チーム2位、女子個人4位になるなど、さまざまな分野で才能を発揮している。人気テレビシリーズ「相棒」出演中。劇場版『相棒』(5月1日ロードショー)にも出演。