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TVでも人気のスーパードクター 順天堂大学医学部教授 小林弘幸先生の健康講座
- 【第23回】怒りは万病のもと 前編 2015.07.13
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「キレる」という言葉は主に若者に使われてきましたが、近頃はそうでもないようです。中高年もカッとなり、手を上げてしまうケースが相次いでいます。
「怒りとは何か」と聞かれれば、医師である私は「万病のもと」と答えます。自律神経のバランスが乱れると、血液の流れが悪くなって細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、様々な病気のリスクが高まります。自律神経を乱す原因として、私たちの最も身近にあるのが「怒り」です。
では、怒っている人の表情を思い出してください。眉間にはシワを寄せ、目は吊り上がって充血し、次第に紅潮。さらに激昂すると顔色は青ざめ、呼吸は浅くなり、唇が紫色に変色します。これは血液が全身の細胞に行き渡らず、酸素と栄養が不足している状態。なかには頭痛やめまいに苛まれ、卒倒してしまう人もいます。
日常生活でこれほど血相を変え、激怒する機会はないかもしれません。ただ、「行列で横入りされた」「赤信号にやたら引っかかる」「隣レジの方が早く会計できた」など、イライラすることは数え切れません。こういった自分自身では意識できない、小さな怒りこそが厄介です。些細なことでも四六時中イライラしていると、自律神経はずっと乱れたまま。やがて体の不調を引き起こすのです。
実際、怒りで交感神経の働きが過剰なとき、体内では大きな変化が生じています。血液は暗赤色になり、アドレナリンが分泌され血液が凝固して〝ドロドロ状態〟に。通常は丸い形状の赤血球は変形し、くっついています。こうなると細胞に十分な酸素を運ぶことができません。
また、血管が収縮して狭くなると、赤血球や白血球などが猛スピードで流れます。すると、血管内壁に傷をつけ、その箇所に血栓(血液のかたまり)ができれば、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしかねません。
今回、挙げたのは怒ることで支払う代償の一例。身体をサビさせる活性酸素を生んだり、疲れやすくなったり、老化を促すことも指摘されています。怒りは自分の寿命を縮めるものでしかないことを心に留めておいてください。次回は怒りとの向き合い方を話します。
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■小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部病院管理学・総合診療科教授。日本体育協会公認スポーツドクター。87年、順天堂大学卒。92年、順天堂大学院医学研究科(小児外科)博士課程を修了。自律神経バランスの重要性に着目し、便秘外来を開設。主な著書『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク出版刊)、『聞くだけで自律神経が整うCDブック』(アスコム刊)など。